既に何度がご紹介いたしましたが、COPCはExecs In The Knowという組織と共同して、CXMB(The Customer Experience Management Benchmark)というシリーズの顧客体験調査を継続して実施しています。
この調査は北米マーケットにおいて実施しており、同じ質問を消費者側と企業側に実施することで、その認知の差をあぶりだすことも行っています。2020年版のレポートの中からいくつかのデータと共にその結果をご紹介したいと思います。
まず最初に、CXMB 2020の調査結果(消費者調査)からマルチチャネルのサポ―トの浸透度合いとその受け入れられ方についてのデータをご紹介します。
マルチチャネルのサポートの浸透度合いと受け入れられた方
Figure1は、過去1年で、企業とのやりとりにおいて電話やメール、チャットといった複数のチャネルと利用された経験のある人の割合を示しています。グラフを見てわかる通り、その割合は、71%へと2020年に上昇がみられました。一方その体験に満足したかとの問いに対しては、Figure 2に示す通り、満足の割合の頭打ち、不満の割合の上昇がみられました。
顧客がサービス提供を受けるチャネルの選択肢が広がっていることは、顧客体験を考える上ではポジティブな兆候ですが、多くの顧客は現状に満足していないということが分かります。企業は顧客体験を向上させていくうえでどのようなことを考慮すべきでしょうか。
複数チャネルのコンタクトを強制された顧客の不満は、自発的に複数チャネル使った顧客の7倍!
2020年の消費者に対する調査と企業に対する調査の対比でわかったことは、企業が考えるより多くの顧客は、自発的に複数のチャネルを使ったのではなく、仕方なく複数のチャネルを使ったということです。
顧客は自分の好むチャネルを使って企業に対するコンタクトの目的を達成しようとしますが、その過程で「壁」にあたり、仕方なく別のチャネルを使っているということです。
そのような状況になると、顧客は「時間の無駄だった」と考えます。皆さんもそんな体験があるのではないでしょうか?お客様が望む「解決」や「完了」まで、そのチャネルで導けないのであれば、早い段階で別の解決まで到達できるチャネルを案内し誘導すべきでしょう。
顧客のコンタクトの目的が最後まで完了できないジャーニーが数多く、同時に改善していくのが難しい場合には、コンタクトの目的ごと(サービスジャーニー単位で)に優先順位を設定し、解決していく必要があると考えます。
マルチチャネルのジャーニーは意図をもって設計されたジャーニーではないため、体験が一貫しておらず、満足できる体験の提供とならない
上記のFigure 4 は、同じく2020年版の企業向けの調査からのデータですが、企業の回答者12%のみが、自分の属する組織は、顧客に対して一貫したマルチチャネルの体験を提供することができていると回答しています。
そんな中で、残念ながら41%の回答者の組織のみが、その状況を改善するための活動をしていると回答しています。問題があると知りながら改善に着手できていない現状が見てとれます。問題は、組織がマルチチャネルの顧客体験をしっかりと設計していないことにあります。
それでは、どこから改善をはじめれば良いのでしょう。予想された答えかもしれませんが、それはやはり現状の理解、データの収集からであると考えます。
どのサービスジャーニーの体験の頻度が高いのか、顧客や企業にとってインパクトの大きなジャーニーはどれかを理解し、優先度をつけてから改善に取り組む必要があります。
サービスブループリンティングを実施し、詳細なジャーニー中のステップを把握し、改善機会を特定します。合わせて、顧客や従業員の「声」に耳を傾け、顧客満足度のデータを分析しインプットとすることも必要になります。
マルチチャネルジャーニーの満足度評価を行っていない
上記Figure 5からは、20%の企業しか、マルチチャネルのサービスジャーニーの評価をおこなっていないということが分かります。
評価を測定し、現状を知らない限り改善活動は始まりません。マルチチャネルのジャーニーの評価をお客様から頂くことは簡単ではないでしょう。コールセンターの対応の後に実施する、顧客満足度調査は、電話対応という「コンタクト」単位の評価は得られますが、コンタクトの目的がコールセンターで達成できるもの以外については、サポートの全工程に対する評価を得るのは難しいと思われます。
サービスジャーニーのタイプごとにその完了時に、評価をいただく新たな調査を設計し、実施している組織もあります。その結果から、顧客の評価が良くないジャーニーを対象に詳細な評価を行い、改善活動に着手しています。このように、現状の顧客からの評価を入手することは改善活動のスタートになります。
最後に
サポートを提供するチャネルのオプションを多くすることは、顧客に選択肢を提供することで、サービスの向上と言えるでしょう。
ただ、チャネルごとに「現時点で可能な最大限のサービスを提供する」という考え方のみで、他のチャネルとつなぎ目を統合的に考えていないと、顧客に「行き当たりばったり」のサービスを提供することになります。
「ここから先は別のチャネルで確認して下さい」となるたびに時間を無駄にしたと思う顧客も生まれることを意識することは大事です。顧客の体験をなぞる活動(ウォークスルー)等を通じて、顧客の体験の詳細を理解し、顧客ががっかりする点(ペインポイント)を把握する活動はきっと新たな発見をもたらします。
COPC規格はリリース6.0以降、このような、「コールセンター」の枠を超えた、顧客体験の向上を目指すためのスタンダードとなっています。