第4回 コーチング成功のポイントは?

2009.09.01

コールセンタークオリティの管理は、経営層(やクライアント)から求められるビジネス成果の実現や、お客様満足度向上を実現するためにとても重要な活動です。そして、クオリティ管理活動の主軸になるのが、モニタリング・コーチングです。前回までのコラムでは、望ましいオペレーションの姿と現状のギャップを把握するために設定する”評価基準”や、全体像を把握するに相応しい”サンプリングルール”、評価のぶれを最小に抑えるための”カリブレーションルール”などについての注意ポイントをご紹介してきました。

今回は、モニタリング活動の成果として、どのようにクオリティ改善・向上に繋げるか、コーチング成功のポイントを考えてみましょう。実はもったいないことに、多くのセンターで、モニタリング活動が評価のための評価にとどまってしまっています。延々と繰り返される「もぐらたたき」状態に陥っているケースもあります。

事例とともに、改善のポイントをご紹介しましょう。

ケース1: ”コーチング”と”フィードバック”は同義語?

あるセンターでは、クオリティ向上の重要な取り組みとして、スーパーバイザー稼働時間の75%程度をモニタリングとフィードバックに割いています。モニタリングは応対者のすぐ横について、応対時の検索や入力手順も確認しながらのリアルタイムモニタリングを行っています。モニタリングの後には、”コーチング”と称して、必ずその応対中に発見された課題について、”指導・改善指示”を目的とした”フィードバック”を行います。課題に応じて、翌月までの期限で改善アクションを指示するのですが、某大な時間をかけているわりに、あまり改善が進まずに、頭を悩ませています。

注意ポイント

“コーチング”では本人の気づきを重視する

このセンターの問題は、本来の “コーチング”が行われていないことです。上からの”指導・改善指示”ばかりが繰り返されるために、本人の意欲を低下させてしまっています。研修で正しい応対を学び、読み合わせやロールプレイングなどを繰り返し、応対者としてデビューしている一人一人がいるはずです。頭ではわかっていても、様々なお客様、様々な案件で、十分な対応ができない場合があり、こういった状況をモニタリングで発見するわけですね。実は、改善しなければならない課題も、その課題に対してどうすれば良くなるのかも、その回答は本人が一番よく知っています。その気づきを本人の中から上手く引き出すのが”コーチング”の役割です。コーチング担当者が饒舌である必要はありません。エージェント(=CSR)が話すボリュームが多くなるよう、本音を引き出す、良きインタビュワーになることがポイントです。自主性を重んじ、CSR自らが気づくことによって、意欲的に改善アクションに繋げることができるのです。

エッセンス

5(ファイブ)WHY

現れている課題に対して、どうしてそうなったのだろう?と5回掘り下げて考えると、根本原因にたどり着くことができます。コーチング担当者は、一緒に考え、時には(心理的不安要素を告白される場面など)自分自身も同じであるといった、同じ目線で悩みを聞くことができると良いですね。
例えば、早口→あせりの気持ちの気づき→心理的不安が動機→お客様の問いに対する苦手意識のきづき→知識不足の気づき といった気づきを引き出せた場合には、早口への注力と同時に不足する知識を補い、安心した心理状況をつくって応対するといった、根本原因を正すための改善アクションを展開することができます。

ケース2: 多くのメンバーに同じテーマのコーチングを実施していませんか?

二例目は、クオリティ改善をコーチングのみに頼っているセンターの事例です。あるセンターでは、エージェント(=CSR)ごとに、担当スーパーバイザーを決めて、1名のエージェント(=CSR)あたり30分から1時間、毎月コーチングを行っています。丁寧なコーチングを行っているのですが、そこで挙がっている課題が複数のエージェント(=CSR)で共通している傾向にあります。例えば、ある問い合わせに対して閲覧するツールの選択ミスによる「誤案内」が多発している状況。この状況は迅速に改善する必要がありますが、個々のコーチングのみに頼ると、改善のスピードが遅くなってしまいます。どうすればより効果的に改善できるのでしょうか?

注意ポイント

複数メンバーに共通する課題は全体プロセスの改善が有効

モニタリングで発見される課題は、大きく2種類あります。複数メンバーに共通する課題と個人特有の課題です。個人特有の課題は、気づきと自主性を重視したコーチングが有効です。複数メンバーに共通する課題はどうでしょう。同様のケースが、複数メンバーに出現するということは、センターで共有しているプロセスのどこかに改善の余地があるということですね。例えば、スクリプトに改善の余地がある/ツールに改善の余地がある/研修不足といったこと。これらを個人の努力でカバーするには無理があり、また、同じ課題が発見されるであろうことは目に見えています。複数メンバーに共通する課題は、センター全体のプロセス改善として解決することがポイントです。

エッセンス

モニタリング・コーチングのサイクルを定める

例:月次モニタリング実施

→分析<センター傾向分析>

→①プロセスレベルの課題抽出→是正処置

→②個人レベルの課題確認→コーチングによる本人の気づき→改善アクション

→次回モニタリングにて効果測定

モニタリング・コーチングはクオリティ管理に必須の活動ではありますが、改善の成果に目を向け、有効な改善活動に繋げることが重要です。いよいよ次回のコラムは、本シリーズの最終回。プロセス改善やコーチングによる改善アクションの効果測定について考えてみましょう。

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