ビジネスにおける重要な顧客接点を担うのがコンタクトセンターです。
コンタクトセンターは高い顧客体験を提供し、強固なブランドロイヤリティを育むための重要な役割を担っていますが、その運営にはインハウスによるものと、アウトソースによるものがあります。インハウスの利点、アウトソースの利点、それぞれに良い所はありますが従業員幸福度の観点では傾向があるのでしょうか。またその傾向から学べることがあるのでしょうか。
今回の分析の結果、アウトソースセンターのほうがインハウスセンターよりも幸福度が高いことがわかりました。
このコラムでは、弊社で行った最新の調査結果を基に、アウトソースセンターとインハウスセンター、その二つにおける従業員幸福度の違いを深堀しています。
結果から読みとれる、職場環境の再定義や人材戦略への示唆をぜひ今後の組織運営にご活用頂ければ幸いです。
※インハウスセンター=グループ内で運営されるコンタクトセンター
※アウトソースセンター=外部委託先のコンタクトセンター
調査の基本情報
- 調査期間:2023年5月~8月
- 調査対象:全国139センターのコンタクトセンターで働くオペレーター、スーパーバイザー、
マネージャーなど含む計10,405名 - 調査方法:インターネット
- 調査内容:主観的幸福度、幸福の感じ方、従業員幸福度・Well-beingに重要な7つの要素に関するアンケート
調査結果トピックス
- アウトソースセンターのほうがインハウスセンターよりも幸福度が高い
- アウトソースセンターのほうがインハウスセンターよりも自社の商品・サービスへの誇りを持っている
- Well-being7つの要素はいずれもアウトソースセンターのほうがインハウスセンターよりも高い
アウトソースセンターのほうがインハウスセンターよりも幸福度が高い
幸福度は「あなたの人生の幸福度に今の職場や仕事で過ごす時間は良い影響を与えていますか?10が最も良い影響を与えている状態とした場合、0~10でお答えください」という設問の回答結果の平均値で表しています。国内全体の平均が5.66であるのに対してインハウスが低く、アウトソースが高い結果となりました。差としては大きくありませんが国内全体でこのような傾向があることが考えられます。
アウトソースセンターのほうがインハウスセンターよりも自社の商品・サービスへの誇りを持っている
幸福度は主観に基づいており同じ5という評価であってもそのレベル感や、何に幸福を感じるかは人によって異なります。この特徴を可視化するために設計されたのが本調査における総合設問です。
総合設問は幸福の感じ方を表す7つの設問から成り、設問に対する同意の程度を7段階評価頂くものです。その回答結果をポジティブな回答の割合(6:そう思う、7:とてもそう思う の回答者の割合)でまとめたのが以下の結果です。
すべての設問においてアウトソースの方が高いことがわかりました。最も差があったのは「サービス・商品への誇り」であり、11%の差がありました。
サービス・商品へ誇りを持つことは、従業員幸福度だけではなく顧客体験にも良い影響を与えることが想像に難くありませんが、実際以下の通り両社の相関を分析したところR²=0.5235という強い相関があることがわかりました。
グループ内の組織に運営されるインハウスセンターのほうが自社のサービス・商品に対する誇りやロイヤルティが高そうなイメージがあるかもしれませんが、今回の調査ではその逆の傾向があることがわかりました。
様々な要因が考えられますが、アウトソースセンターはインハウスセンターよりも業務に特化していることが一つの要因として見ています。アウトソースセンターでは、競争力維持の観点からも特定の業務に焦点を当て、業界のベストプラクティスを追求することが求められるため、より洗練されたプロセスと効率的な業務運営が可能となります。これが結果としてアウトソースセンターとしての効果的な顧客体験向上プロセスの設計、それが現場レベルでも効果として感受しやすいことが表れているのかもしれません。
Well-being7つの要素はいずれもアウトソースセンターのほうがインハウスセンターよりも高い
Well-being7つの要素は従業員幸福度・Well-beingに重要となる設問群です。7つのグループにはそれぞれ6つずつ設問があります。職場やプライベートを含む体験を表すために設計された設問です。アウトソースのほうがインハウスセンターよりも幸福度が高いことがわかりましたが具体的にどのような要素で差がでているのか把握するためにそれぞれの要素のポジティブ評価を比較したのが以下です。
ハラスメントを含むリスクが低く働きやすい職場かを測定する「健全な職場」が同等だったことを除き他のすべての要素でアウトソースが高いことがわかりました。
とくに差が大きかったのは「学びと成長」と「能力の発揮」でした。
多種多様な業務に携われるアウトソースセンターの業態としての特徴が表れている可能性も一つの要因として考えられますが、アウトソースセンターのほうが従業員の個性を活かした能力・長所の発揮を促進するための、スキル開発支援が高い水準で行われている可能性が見えました。
参考情報
昨今のビジネスシーンにおいて重要な競争力の源泉である顧客接点を司るコンタクトセンターは、オムニチャネル環境において複数の接点を通じた顧客の体験を管理すること、またビッグデータを活用したパーソナライズな対応など様々な期待に応えることを求められます。そのためには様々な技術的、運用的課題が存在するだけでなく、これらを最低限のリソースで対応することも、同時に従業員の幸福度を尊重することも重要な課題としてあげられます。
上記全ての課題・目標に対してコンタクトセンターは生産性の高いWFM、RPAやAIを活用した技術の活用、適切なKPIの実装によるパフォーマンス管理など多岐に渡るテクニックが必要ですが、これらの運営のためのヒントはあるのでしょうか。
これらの課題解決・目標達成のヒントをお伝えするため弊社では以下の無料オンラインセミナーを開催いたします。ぜひ2024年度の事業計画実行の参考にしていただければ幸いです。