顧客中心主義の視点からのチャネル戦略 その1(全4回)

2018.04.13

今回は、COPC社のコンサルタントのコラムから「顧客中心主義の視点からのチャネル戦略」についてご紹介します。4回シリーズの1回目では、「会社が提供している顧客対応チャネルと、顧客が利用しているチャネル」についてのお話です。

このコラムを書いているジュディ氏は、COPCのカスタマージャーニーマッピング(CJM)ワークショップの開発者の一人で、昨年、プロシードのメンバーに対するCJMワークショップの実施にむけてスキルトランスファーやCJMコンサルティング事例の共有の目的で来日し、プロシードのメンバーと時間を過ごしました。ワークショップの期間には、フィールドスタディとして店舗での顧客サービスの確認やその評価の目的で、都内の電気店や飲食店にも同行し、「怪しい人たち」とできるだけ思われないようにしながら、見取り図や、顧客やサービススタッフの導線のスケッチや、サービスを受けるまでにかかった時間、顧客を待たせる際の工夫等を記録しました。

日本の店舗においては、外国人に対応する際に遠慮や恥ずかしさがあるのか、顧客が放置されることが多いと感じているようでした(日本人は、ショッピングの際に放置されることを好む人が多いと思いますが、いざ、店員のサポートが欲しいと思ったときになかなかサポートしてくれる人がいないのは個人的にも不満に感じました)。

私生活では、靴とカメラのショッピングが大好きで、顧客サービスで有名なZapposやB&H Cameraが大のお気に入りで、自分のショッピング体験を生き生きと語っていました。

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Part 1:自社の提供する顧客対応チャネルと、お客様が利用しているチャネル

提供すべきコンタクトチャネルを、戦略的に、顧客中心の視点で考えていく上での最初のステップは、現時点で提供されているチャネルとお客様が、どのチャネルを利用しているかを定量的に分析することになります。それを実現するためには、以下の3点を詳細に確認することが必要です:

  • 提供されているコンタクトチャネル
  • 提供されているチャネルで実現可能なこと
  • チャネルを網羅した、コンタクト理由とコンタクト数

これを実現するには図1に示すような「チャネルマトリックス」を作成するのが一つの方法です。

 

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図1: チャネルマトリックス

左側には縦に、現在提供されているチャネル(どのようにお客様とコンタクトするのか「How」)が列挙されています。架空の会社の例である図1は、5つのチャネルが用意されていることを示しています。チャネルは、その業務のボリュームや相対的な重要度にかかわらず、すべて挙げてあります。
横の列は、コンタクトの様々なタイプ(目的)「Why」が列挙されています。こちらも、そのボリュームや重要度を問わず包括的な記録が必要です。
縦横に挙げるべき情報が特定された後の次のステップは、コンタクト理由ごと、チャネルごとの発生件数を記録することになります。図1の例をとると、すべての「認知/リサーチ」目的のコンタクトを対象に、オンライン/ウェブでのコンタクトの割合、電話、チャット等チャネルごとのコンタクトの割合を求めます。この作業を完了することで、お客様がそれぞれのコンタクト理由において、どのチャネルを一番利用するのかを割合で知ることができます。この図により、チャネル活用度の現時点でのスナップショットを理解するのと共に、業務量に基づいてどのチャネルの優先度を上げるべきかの判断をすることができます。上記の例では、オンライン/ウェブ、電話、店舗はコンタクトのタイプを問わず、高い割合のコンタクトが発生しているので重要な役割を持つチャネルであることがわかります。
提供チャネルをマップ化することにより、より答えるのが難しい質問も出てきます。例えば、オンライン/ウェブ(上から1行目)のキャンセル(一番右の列)ですが、なぜお客さまはオンライン/ウェブでキャンセルができないのでしょうか。それはビジネス上の判断なのでしょうか、それともシステムの技術的制約による理由なのでしょうか?

一方、このマップの中で、「なぜお客様が特定のコンタクト目的においてあるチャネルを利用しないのか」という疑問を考察することで、新しいサービスやその改善に関するアイデアが見つかることもあります。オンライン/ウェブ(上から1行目)、テクニカルサポート(右から2番目の列)が、そのよい例でしょう。テクニカルサポ―トはオンライン/ウェブでも提供されているのにもかかわらず、お客様はそれを利用していません。それはお客様の認知の問題でしょうか、情報提供の方法に問題があるのでしょうか?はたまた全く違う理由が存在するのでしょうか?

これらの質問について、今後のこのコラムで詳細に触れていく予定ですが、チャネルマトリクスを作成することは、チャネルの活用度を定量的に測るのみではなく、改善機会やチャネルの制約の理解も進め、顧客体験の改善活動やその優先順位付けの基礎となります。

※英語での記事はこちらになります。
https://www.copc.com/customer-centric-approach-to-channel-strategy-part-1/

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どうでしょう。非常にシンプルなツールではありますが、顧客体験を向上していくための現状把握のためには欠かせないステップであると思います。表にしてみると単純ですが、すべてのチャネルがコンタクトセンター部門の管理下にあるわけではないので、なかなか簡単には集まらないデータかもしれません。

改善対象として選択するコンタクトの目的やそのチャネルは、必ずしも現状で一番頻度高く利用されているものとは限りません。頻度のほかに、組織が戦略的に今後重要視していこうとしているコンタクト、チャネル等があれば当然その現状の顧客体験を分析、改善の対象に含めていくべきであると考えます。またお客さまの特定の目的のコンタクトは一つのチャネルのみでは完結できないケースもあるかもしれません。なぜ一つのチャネルでは完結できないのか、といった問から改善すべき箇所が特定されてくるケースもあるでしょう。

プロシードが提供している「COPC__カスタマージャーニーマッピング(CJM)研修」の中でも、顧客コンタクトの「Why」と「How」を明らかにし、コンタクト数を定量化するチャネルマトリックスの作成ステップやその活用がカリキュラムに含まれています。CJMを作成することがゴールではなく、作成の過程を通じて見つけられた顧客体験のギャップを改善していく活動の最初のステップと位置付け、その活動の中で使用する方法論やツールが提供されるので、実践的な研修であると思います。

 次回は「顧客中心主義の視点からのチャネル戦略」その2として、お客様の求めるチャネルとそこで実現できることが期待される機能についてご紹介させていただく予定です。

 プロシードのCJM研修のご紹介はこちらになります。

http://www.proseed.co.jp/cjm/index

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