COPC規格はリリース6.0からCX規格になり、コンタクトセンターのみではなく、デジタルのセルフサービスを含め、顧客サービスを提供する組織をすべて対象にした、CX(顧客体験)を向上するためのマネジメントシステムとなりました。パフォーマンスマネジメントの焦点は、個々の顧客接点(タッチポイント)であるインバウンドコール対応、電子メール対応、チャット対応から、お客様の要求や期待、依頼の対応が始まってから完了するまでのトータルの工程(COPCはこれをサービスジャーニーと呼びます)に広がっています。
個々のタッチポイントでよいサービスを提供してお客様に良い印象を残したとしても、トータルのサービスジャーニーとして、時間がかかりすぎたり、やり直しが多かったりということで、お客様側に発生する労力(カスタマーエフォート)が大きすぎると、顧客体験は良いものとはなりません。
サービスジャーニーの問題を特定し、改善していくことは簡単ではありません。理由の一つは、サービスジャーニーが、お客様の選択する複数のチャネル(コンタクトセンターでの電話応対、ウェブ上の情報提供、店舗のスタッフの対面での対応、会社から送信されたメール、文書)がかかわっていることです。それぞれのチャネルに責任を持っている部署が異なることで、部門を跨る問題の特定や改善活動が責任範囲の問題で実施することが難しくなります。
サービスジャーニーの中で、お客様の体験に影響を及ぼすネガティブなイベント(ペインポイント=痛点)がどこで発生するのかを図示するのには、カスタマージャーニーマップ(CJM)を活用することができます。COPCは、このような目的で、カスタマージャーニーマップを利用する方法論を開発し、研修を提供しています。日本ではプロシードが、研修を実施しています。
この研修では、マップの対象とするサービスジャーニーの絞り込み方や、マップを作成する際の情報を集める方法であるタッチポイントウォークスルーの実施方法等を含めて、実施の方法論やその際に利用できExcelのツールキットも提供しています。
COPCはさらに、サービスジャーニーの改善のための考え方を学ぶ研修や支援サービスとして、「サービスジャーニーシンキング」を開発しました。サービスジャーニーシンキングでは、「お客様の期待とのギャップが生じるのはどのような時か」や、「カスタマーエフォートを改善するために考えるべきポイントは」、といったトピックやその改善のための考え方を紹介しています。その中で、改善機会を見つけるためのツールとして、サービスブループリンティングを使用します。サービスブループリンティングは、Lynn Shostackによってに提唱されたツールで、顧客視点での体験のみならず、サービス提供組織側の行動も、顧客の目に見える活動とバックステージで実施される活動に分けて記録します。それにより、サービス提供組織側で改善すべき活動をより明確に把握することが実現できます。1984年に提唱されたものですが、今でもサービス提供プロセスを図示するのに効果を発揮します。
プロシードでも、このサービスジャーニーシンキングのサービスの導入を予定しています。今年のPBS(プロシードベンチマークサミット)-CX Leaders Weekの中でのご紹介を計画しておりますが、ここでもいくつか、カスタマーエフォートを改善するアイデアをご紹介いたします。
・ Next Issue Avoidance(次に発生する課題の回避)
例えば、お客様から電話でのお問い合わせがあったとき、AHTの短縮を意識して、問合せ頂いた内容への回答のみを行うと、そのお客様がその次のアクションをスムーズに実施できないことが起こりえます。
例えば、お客様から、「あなたの会社の商品はどこで売っているの?」と聞かれて、お客様の郵便番号から近くの店舗を紹介し、電話を切ったとします。商品について詳しく聞くことができていれば、その近くの店舗に在庫があるまで確認し伝えることできますが、その追加の情報の確認をしないと、お客様がその店舗に行ったの買うことができずに出直すことが発生しないとも限りません。
・Failure Demand(前工程の失敗を取り戻すための作業)の理解
今実施している活動が、「お客様に付加価値を提供しているもの」か、それとも「前工程の失敗を取り戻すためのもの」なのかを理解することが大事です。
例えば、家電製品に同梱されている取扱説明書がわかりづらいので、その説明を求めてコールセンターにかかってくる電話は、後者の例です。その電話の対応をどれだけ効率的に実施するのかに注力するより、その作業自体をなくすことに注力すべき対象となります。
CJM研修、今後実施予定のサービスジャーニーシンキング研修は、CXの向上に取り組まれる皆さんには、その準備にピッタリの研修かと思います。ご検討ください。