皆さん、人材定着には普段悩んでいるのではないでしょうか。どんなに努力しても、辞める人もいますよね。もちろん100%の定着率は客観的に不可能ですし、COPCのベンチマークにもこんな目標値はありません(笑)。しかし、運営上、大事なのは、残ってほしい人材に残ってもらう、同じ時期に多人数の退職を避けるということです。
ここまで読むと、「それは誰でも知ってるよ!辞めさせないように一生懸命、離職分析や改善活動を実施しているだけどね…。もしかしたら、全員に昇給?!」と思っているかもしれないですね。うーん、全員を昇給させてみたら?(笑)冗談です。
では、何か良いプラクティスはあるでしょうか?答えは、あります!
私が以前中国でCOPCの審査をした際に、インタビューした優れた事例ですが、少しでも、参考になれば嬉しいです。
このストーリーは元宵節(げんしょうせつ)の話から開始したいので、皆さん、焦らずに、最後まで読んでみてくださいね。
つい最近、私、Anneは再び台湾に行ってきました。2月19日、台湾のある大手銀行のセンターを訪問しました。センターツアー後、クライアントから「今日は元宵節ですよ!元宵を食べましたか?」と聞かれました。私は日本にいるので、すっかり忘れていましたが、その日は偶々旧暦の1月15日、つまり中国の伝統的な元宵節(げんしょうせつ)であることをやっと気づきました。
中国大陸も台湾も旧正月を賑やかに過ごす伝統があるので、法律上に決められた旧正月休みは、旧暦の1日から7日の1週間しかありませんが、皆の気持ちとしては、1週間ではなく、旧暦15日までで、リラックスする習慣があります。
なので、元宵節と言えば、「元宵」という、美味しい餡がたっぷり入ったもち米団子を食べることだけではなく、会社員達は気持ちを休みモードから仕事モードに正式に切り替えて、気を引き締めて翌日から新しい一年の開始として頑張り始める特別な日です。
では、元宵節と離職にはどのような関係があるでしょうか?
実際、中国大陸でも、台湾でも、多くのサービスセンターの共通している悩みの一つは、元宵節直後の退職ピーク(欠勤や遅刻も)です!元宵節になると、「もしかしたら、退職者が急に増えるのでは?休み明けで呼量も増えるだろうし、採用も難しいし、どうしよう…」と心配で、元宵を美味しく食べられない管理者は少なくありません。
この事例の主人公のある中国のセンターは、何年間も同じ悩みを抱えていました。離職面談内容を分析したところ、「新しい仕事へ転職、体調不良、両親の面倒を見るから実家に戻る、結婚や育児のため」など、一般的な結果でした。「そもそも年明けは転職しやすいし、冬だから体調不良も多いし、両親の面倒を見ることも大事だし、プライベートの事には言えないし、仕方ない。やっぱり昇給させたり、面談をしたり、多めに採用して準備してみよう」と悩みながら、中々改善できなかったのですが、ようやく一昨年、あるアクションを通じて、一気に解決に至りました。
そのアクションはすごく簡単なものです。一言で言えば、センターの社長が手書きでお手紙を書いて、年賀状に同封して、オペレーター一人一人に渡し、家族の人に見てもらうことだけです。
それだけで、何と、旧正月明けの集中退職を80%以上解決したのです!
では、その年賀状にどんな内容を書いたのでしょうか?
大体の意味は「〇〇さん、この一年間本当にありがとうございました!(具体的な良い点、それぞれ違う)あなたは私たちの顧客にとっても、会社にとっても、私にとっても、貴重で不可欠な存在です。また、この場を借りて、〇〇さんのご家族にも感謝の意を表したいと思います。ご家族が〇〇さんをサポートしてくださっていることは、会社をサポートしてくださっていることです。本当にありがとうございました!〇〇さん、旧正月をごゆっくりお過ごしください。でもぜひ会社に戻って来てくださいね!私がここで待っているから。社長 〇〇〇 」
皆さん、いかがでしょうか。
「あ~、なるほど!勉強になりました。うちもそうしてみよう」と思いますか?
それも良いですが、そうする前に、皆さんに考えてもらいたいのは、何故それだけで解決したのか?ということです。以前も色々工夫したのに、何故今回だけ効果があったのでしょうか。
アクションが適切かどうかを決めるのは、正しい根本原因分析となります。
その会社が旧正月の集中退職に対して、5WHYで原因分析をしてみました。多くの理由がありますが、正しく分析した結果、ある隠れた理由を発見しました。それは「両親や家族に退職を勧められたから辞めたくなった」ということです。
何???理解できませんが、事実です。
オペレーター、特に若い人や新人達が一年間仕事をして久々に実家に戻るので、「仕事はどう?」と聞かれます。仕事は疲れるし、お給料はいまいちだし、シフトだし等と言うと、「えーー、かわいそう…。辞めたいなら辞めていいよ。年明けから新しい仕事を探しましょう!」と両親や家族の人はこのように慰めます。全てではありませんが、信頼できる両親や家族の人にこう言われたら、本気で辞めたくなるというオペレーターは少なくありません。
その原因に対して、どうすればいいのでしょうか?
もちろん、沢山のやり方があります。前出のやり方は、非常に適切な解決の近道だと思います。なぜなら、オペレーターの両親や家族の力をポジティブに使ったからです。そのお手紙を読めば、「社長までも褒めてくれてすごい!仕事は大変なのに、よく頑張ったでしょう!こんな素敵な会社で働いて良かったね!私たちも応援してあげるよ!」と両親や家族に励まされて、沢山のオペレーターは仕事に対する誇りを持って、やる気満々で職場に戻るでしょう。旧正月の集中退職はこれだけで大幅に解決しました。
その会社はそのアクションでうまく解決しましたが、アクション自身は全ての会社に適用できるわけではありません。何故かというと、それぞれの状況は違っているからです。でも、ある程度の参考になると思いますので、ここでシェアーしました。
どの会社でも適用できるのは、問題解決の方法論とツールです。
多角的な仮説、全面的なデーター収集、代表的なサンプリング、正確な根本原因分析、有効的な結果の検証などのスキルとノウハウは、管理者の武器として、いつでも手に携えて、運営上の様々な課題を解決できれば良いのではないかと思います。
ここまで読んで頂いて、なるほど~~色々勉強したい!と思った方々は、弊社のSix Sigma研修へお問い合わせくださいね(笑)。