企業とお客様の接点は、加速的なAIの発達とともに、企業の提供する自動化の仕組みで自己解決できる場が増えています。一方で、関心・検討度合いが高いお客様や、心配・不安要素があるお客様は、人とのコミュニケーションによって解決することを希望するため、電話の窓口は、過去よりいっそう顧客体験を左右する重要な接点となっています。電話の窓口に優れたコミュニケーションのプロを置くことによって、お客様満足とお客様に選んでいただく結果を導くことができます。
そこで【コミュニケーションのプロを育成する】をテーマに、2回のコラムを記載したいと思います。第一回目の今回は傾聴力。第二回目は提案力です。
■傾聴力育成のポイント
「傾聴力が課題と言われたがどうすれば向上するか?」「傾聴力を上げるためにはどんなトレーニングが有効か?」よくそんな課題や悩み事を耳にします。
傾聴力は、「質問力」「聴く力」であることは周知のとおりですが、トレーニング効果を左右する要素として、電話の会話中、応対者が<どこに意識を置き>、<いつ、どのように整理しながら聞く(聴く)か>のポイントを押さえることがあります。
■アウトプットイメージを明確にする
電話のコミュニケーションは、お客様からのインプット(いただく情報)と、お客様へのアウトプット(伝える情報)とで成り立っています。傾聴はインプット側の行動ですが、どのようなアウトプットのために傾聴力を強化するのか、はじめにトレーニングする側、される側双方で押さえておきましょう。
お客様から期待されるアウトプットの共通項は、解決・迅速・わかりやすさ・親身さ(「解決の道筋がたつこと」「スムーズであること」「わかりやすいこと」「自分の気持ちや温度感にあったやりとりであること」)です。アウトプットの期待に応えるためには、インプットにおいて、①<未来>電話を切った後にどうしたいのか/どうなりたいのか ②<過去~現在>どんな状況/背景なのか ③<現在>どんな気持ち/温度感なのかといったお客様像を具体的にイメージすることが求められていると共有できます。
それでは、どうすれば傾聴力がアップするのかの本題を、<マインド:意識の置き方><テクニック:会話内での整理の仕方>2つのポイントでご紹介します。
■傾聴力育成のポイントその1 <マインド:意識の置き方>
・・「会話の早い段階から切電後のお客様に意識を置く」
英語のコミュニケーションの場合、お客様がどうしたいのか、聞き逃すなんてことはありません。どうしたいのかをお客様自らが申告するところから会話が始まるからです。ところが、日本語のコミュニケーションは、お客様申告時「私」を主語として始まらないため、この最も重要なことが抜けた状態でも会話が成立します。電話を切ってから、「この人、何がしたかったんだろう・・・」となってしまい、お客様を不満に感じさせてしまうことがあります。
ポイント:電話を切った後、お客様がどうしたいのか/どうなりたいのかに意識を置いた質問力を強化する
例)お客様:「ロックがかかったので解除したいんです」
→パターン1「ロックの解除ですね。それでは解除手続きをご案内いたします。・・・」
→パターン2「お困りですよね。今回は、どのような操作をされたかったのですか?」「住所の変更でございますね。かしこまりました。それでは、まずロックの解除方法をお伝えいたします。申し訳ございませんが、手続き完了まで3日ほど時間がかかりますので、ご住所変更につきましては、よろしければこのお電話で承りますが、いかがでしょうか。」
パターン2のように、切電後の解決に意識を置いた質問からの会話展開によって「自分のことを理解し配慮ある応対をしてもらえた」と満足していただける応対につなげることができます。
■傾聴力育成のポイントその2 <テクニック:会話内での整理の仕方>
・・受け止めながらお客さまイメージと次の会話展開を整理する
インプットのあるべき姿は、お客様の未来、過去、現在を具体的に把握するということです。スムーズに会話を進めるためには、重要な質問から投げかけ、お客様全体像を理解したいものですが、そのタイミングになるのが、復唱やあいづちの受け止めです。
ポイント:①あいづちや復唱の受け止め時にお客様の気持ち・温度感をイメージする。
②あいづちや復唱の受け止め時に次の会話展開を整理する。
例)お客様:「〇〇の登録方法がわからなくて、、何度も試してるんですけど。」
→パターン1「〇〇の登録方法は、・・・(ご説明)」
→パターン2「わかりにくく、申し訳ございません。ご案内いたします。〇〇の登録にあたっては、事前に・・・の申請が必要ですがお済でしょうか?」「かしこまりました。ありがとうございます。登録方法は、WEBでご登録いただく方法と、このお電話で承って用紙をお送りさせていただき、ご返送いただく方法がございます。お急ぎであればWEBのお手続きが早いのですが、いかがいたしましょうか?」「かしこまりました。では操作方法をご案内いたします。」
パターン2のように、お客様が早い段階からを伝えてきている「困っている」温度感を把握し、応対を切り替えながら会話を進めることが満足度を左右します。受け止めながらお客様の言葉への理解を示すことによって、同時に、応対者がお客さまの解決をイメージし、未来、過去、現在のどの情報が欠けているかを客観的に整理し、重要な質問からの会話展開することによって、会話全体のスムーズさ、わかりやすさ、親身さ、解決に貢献することができます。
今日ご紹介したポイントを具体的なトレーニングに組み込む事例をご紹介しましょう。
①.センターによくある入電切り口を想定し、口に出された用件を受け止めながら、切電後どうされたいのかに意識を置きます。切電後どうされたいのかをイメージできなければ、受け止めに続けて質問を投げかけるトレーニングを行います。
②.受け止めながら相手の温度感を理解して「ご安心ください」「すぐにお調べします」など、温度感にあった言葉や対応に切り替えるトレーニングを行います。
③.受け止めながら状況を整理して、複数想定される質問の重要な質問から投げかけるトレーニングを行います。
<意識の置き方><整理の仕方>は、質問力、聴く力を養うにあたって重要な鍵であり、人によるばらつきを抑えた育成に役立ちます。参考になりましたか?
次回は、提案力をテーマに記載します。