先日、友人がバイクの査定をチャットで行っていたため、興味をそそられて見ていました。走行距離や車体番号等を入力して、いざ査定! と二人でワクワクしていると、
「担当者よりご連絡します。ご連絡先のお電話番号を入力してください。」
のメッセージが…。
皆さんが査定を行った本人だとしたら、このメッセージに対して、何を感じるでしょうか?
きっと多くの方は、私たちと同じく「なんだこれ…」とがっかりするのではないかと思います。
この会社は、顧客体験の向上に繋がると考え、チャットを導入したはずです。それにも関わらず私たちががっかりしてしまった原因は、チャットを使って気軽に査定できる、という期待を裏切られたからです。
では、なぜ、その期待を裏切る結果となったのでしょうか。原因は、2つ考えられます。
1つ目は、チャットを利用する顧客の期待を把握(想定)していない。
2つ目は、チャットが、企業視点で設計され、サービスを提供している。
同じように感じられるかもしれませんが、実は上記は異なるものです。
まず1つ目の顧客期待。「お客様は商品・サービスに対し、何を期待するのか?」です。
今回の例であれば、「概算であろうとも、チャットで査定が完了する」ことを期待しています。
査定結果がよければ、電話での問合せや、店舗に直接来店を検討するかもしれません。しかし、チャットで査定を行っている時点では、電話や来店は考えていないのです。
逆に言えば、「電話や来店が面倒だから、気軽にチャットで査定を行った」のですが、その結果が“担当者からの電話連絡”では、期待を大きく下回るため当然がっかりします。
次に2つ目の企業視点でのサービス提供。
今回の例であれば、「そもそもチャットは問合せの“入り口”で、顧客の間口を広げるもの」という考え、あるいは「チャットでの概算を正式な査定額と思われては困る、営業担当から架電してしっかり説明(場合によっては来店依頼)を行おう」という、企業側の都合です。
査定額が違う!という苦情から従業員を守るため、あるいは不要な工数を従業員に課さないためなど、理由は企業によって様々あるかと思います。ただ、これらの理由は、顧客の都合や期待には関係がないことでしょう。
企業がサービスを提供する際、サービス提供の部門の違いなどもあり、チャネルによって顧客体験に一貫性がないことが多く見受けられます。
しかし、企業のサービスを利用しようとする顧客は、1つのサービスやチャネルだけに留まらないことが増えてきています。
個々の顧客接点・チャネルをバラバラに設計するのではなく、どの接点・チャネルを利用しても、違和感やストレスなくサービスを利用できるよう、顧客視点に立ったサービスを設計していきましょう。