先日、ウェビナーを開催するにあたり、上司と共に、「自分の顧客体験事例」を出し合いました。出てくるのは「悪い顧客体験」ばかりで、結局お互い「よい顧客体験」は思い出すことができませんでした。
悪い顧客体験は印象に残りやすいから?それもありますが、人には不快なこと・大変だったことを他者と共有し、共感してもらいたいという心理が働くためです。
コロナ禍による顧客の嗜好や価値観の変化とは関係なく、今も昔も顧客が求めることは「簡単かつ最短で解決できること」。しかし、私の個人的な経験の多くが、「早く答えを知りたいから、やりたいことを先回りして伝えたのに、途中で「さっき言ったこと」を聞かれる」「電話で待ちたくないので、Webで解決したいのに、FAQが分かりにくい、記載されていない」等、「最短かつ簡単」には程遠いことばかりです。
先日10年程前に書かれたカスタマーエフォートに関する記事を読みましたが、そのころから「顧客はたやすく問題を解決することを求めている」とあり、顧客サービスにおけるこの視点の重要性、かつ現在でもまだまだ改善の余地があることに驚きを隠せませんでした。別のレポートには、解決に多大な努力が必要だったと答えた顧客の81%が、他の人にその会社について否定的に話す可能性があると書かれていました(冒頭の私たちのようですね)。反対に、よかった体験を他の人に共有する可能性は1%しかないそうです。
例えば、オンラインで買い物をする際に「口コミ」を参考に購入するのと同様に、身近な人からの口コミの信頼度は高いため、実際に体験した顧客だけでなく、将来の顧客をも失いかねないとも考えられますね。
では顧客サービスを提供するにあたって、どうしたらいいのか。
顧客体験とは、COPCでは「複数のタッチポイントやチャネルでの体験の積み重ね」と定義されます。
その中には、サービスジャーニーとCOPCで呼ばれる「(顧客が)問題を解決するための、起点から終点までの一連の工程」が幾度となく繰り返されます。
顧客サービスを提供する側は、サービスジャーニーを顧客視点で特定し、それに合わせたプロセス設計が求められ、それができているかを顧客に評価・FBをもらい改善をしてくことが求められるわけです。
よくある問い合わせの上位に該当するものを徹底的な顧客目線で見た時に、顧客はどういう工程を経て解決しようとしているのか。
電話で何かの手続きについて問い合わせをしてきた顧客を考えてみましょう。
何も調べずに電話で問い合わせをしてきたのでしょうか?恐らく、半分以上の顧客はWeb等を調べてから電話で問い合わせているはずです。企業目線で考えると「Webに載せているのに電話をしてくるということは、何も調べていないのだろう」となるかもしれません。
しかし、ネットが使えないと言われる、7-80代は、スマホを使いアプリを使いこなし、ネット検索等は当たり前。現役時代にメールやネットを使っていた世代ですから、使えないと考える方が不自然です。あるいは、家族が代わりにWebで検索しているかもしれません。しかしWebで回答が見つからなければ、本人が電話して問い合わせるしかない、かもしれません。
重要なことは先入観をなくし、徹底的な顧客視点で、解決までのジャーニーを洗い出すこと。どこに「大変さ」に繋がる痛点があるかを見出し、改善すること。この活動なくして、真の顧客体験の向上はできない、と考えてもいいでしょう。
昨今の自分の体験を考えると、「電話応対は何か品質改善に取り組んでいる」ことを感じさせるものが増えている=1回ごとの接点の満足を高める活動に取り組んでいる」と感じる一方、「解決するには時間がかかって面倒だった=解決に至るまでのジャーニーの満足を高める活動には取り組んでいない」と感じる場面が多くあります。
今一度、真の顧客体験を高めるにはどうすべきかを考えてみてください。