サービス業界において顧客体験を向上させるヒントを紹介します。
今回は私がホテルで宿泊した際の体験を事例として、顧客体験の改善方法について説明します。
顧客体験の向上は皆様にとって最も重要なことですよね。しかし、色々な取り組みを行っても思うような結果が出ない事はありませんでしたか。皆様が改善しようとしているポイントと、お客様が求めているポイントにずれが生じていることが大きな原因となっているかもしれません。お客様が求めているポイントとは何か。私の実際の宿泊体験を元に、考えてみましょう。
顧客体験改善手法
- 顧客体験の可視化
- ジャーニーマップ上のチェックポイントの理解と把握
- 現状診断の掘り下げ
- 有効なCS調査の設計
改善手法1:顧客体験の可視化
以下のマップをご覧ください。
これはカスタマージャーニー・マップと呼ばれ、顧客体験を可視化するために大変便利なツールです。
お客様は実際の宿泊というサービスにたどり着くまでに様々な体験をしています。
ただし、全ての体験を改善するには多くの時間と工数を要します。そこで改善のコツとしては全ての体験を改善するよりも、お客様体験を大きく左右するタッチポイントから改善したほうが効果的で早く活動が始められます。
タッチポイントは、業種によっても異なりますが、お客様の声やアンケート結果を反映させるのが一般です。
私の場合ですと、チェックインが一番印象に残るタッチポイントでした。
チェックイン手続きが無事に終わり、部屋に向かおうとした時にスタッフに呼ばれました。「少々お待ちください」だけ言われ、そのままロビーで5分程待たされました。
少し不安な中待っていると、お客様限定のサービスだと言われ、クッキーをもらいました。とてもうれしかったのですが、実際はチェックイン時にスタッフが忘れていたようで、慌てて渡されたため印象としては減点です。また、渡す時にあまりホスピタリティを感じられず、事務的に感じました。
そもそも、旅行サイトは自社のファンづくりやビジネス関係強化の目的でコストをかけて、手土産を配っていたと思います。しかしこのようなちょっとしたミスでお客様を不快にさせるリスクもあります。
では、どうすればこのようなリスクを防げるのでしょうか。
改善手法2:ジャーニーマップ上のチェックポイントの理解と把握
ジャーニーマップを描いた後、チェックすべきポイントはお客様との乖離がないかを確認することです。
具体的にはAs Is(今顧客が体験している実際のジャーニー)とTo Be(ブランドとして理想とするジャーニー)の比較から、乖離が大きい点を見るのが一般的です。
しかしチェックポイントは実際に経営戦略やブランド戦略、顧客体験戦略、ペルソナなどによりけりです。その他、一般的チェックポイントをお伝えします。
【ポイント】
- 施設間(利用チャネル)の連携はスムーズだったか(例:ホテルの部屋からスムーズにホテル敷地外の飲食店へたどり着いたか)
- お客様の感情ジャーニー(Emotional Journey)がどのように変化しているのか(例:ホテル内のレストランは予約必要の旨を案内されなかったため、結局利用できなくてガッカリした)
- お客様の本当のニーズと実際の体験にギャップがないか(例:チェックイン後早く部屋に行って寛ぎたいところ待たせている)
- より良い顧客体験を提供するための潜在的なチャンスがないか(例:道路上に初心者でも分かりやすいように駐車場への行き方を標記する)
今回の私のジャーニー場合、手土産を渡すことが目的ではありません。
お客様がくつろいでいる最中に、タイミングよくクッキーを渡すことが出来ればお客様の喜びは大きかったはずです。スタッフの教育やルールを見直すことで、顧客体験を向上させることができます。
改善手法3:現状診断の掘り下げ
顧客体験の向上を実現するために、もう一つ企業として必要なことは現状診断です。実態を分かった上で、自社のビジョンや目指す姿と照らし合わせ、そのギャップを改善していくためです。
現状診断の有効な方法として、ミステリーショッパーがあります。
私が確認する限りほとんどのミステリーショッパーは数百項目のチェックシートで構成されていて、各項目の点数は全て同じに設定されていました。
例えば、「スタッフとのコミュニケーションの中にホスピタリティを感じたかどうか」と「チェックアウト時忘れ物について確認したかどうか」がそれぞれ1点だとします。そうなると、お客様に寄り添わず事務的な応対をしていても意外と高い点数が取れますので、お客様視点で評価できなくなります。
実際は、忘れ物の確認よりも、ホスピタリティを感じて頂けた方が圧倒的に満足度に繋がります。そのため、チェックシートにて現状診断をする際に、お客様にとって大切な要素はウェイトを変えた方が望ましいです。
改善手法4:有効なCS調査の設計
自社サービスの実態と課題を把握した後は、お客様視点でも同じことが課題なのかを確認することが必要です。お客様の声を収集する方法の代表的なものにCS調査があります。
しかし実際にCS調査を行ってみると、回収率が低い、お客様の声をどこから分析すれば良いか分からない等お悩みはありますよね。このような状況になる理由として、CS調査の設計自体に問題がある可能性が高いです。
例えば、お客様からより多く情報を得たいと設問数を増やすと、回収率は低下し、回答の精度も下がります。結果として、改善点が見えづらくなります。また、お客様に簡単に記入していただくために、5段階評価などの設問を多く設計します。すると今度は各設問がなぜそのような回答になっているか原因特定が難しくなります。
では、最適なCS調査を設計するためには、どのようなポイントに気を付け設計すべきでしょうか。
【ポイント】
- 設問数を減らす。15~20問を推薦。
→回収率と回答の精度が上がる。 - 設問に調査の目的・ポイントを反映させる。
例:ホスピタリティを課題とした場合はホスピタリティに関する設問を増やす。
→改善の方向性を検討するために使える。 - お客様に聞くタイミングを研究する。
→聞くタイミングが悪ければそもそもご回答頂けない懸念もある。
イメージが付きましたでしょうか。
顧客体験を効果的に改善するためにミステリーショッパーもCS調査も大きな役割を担います。回収率を高め、意味のあるデータを収集するために、実施前に、聞くポイント、聞く内容、聞くタイミングを定義する必要があります。考えてみれば当たり前のことですが、できている企業は多くありません。
その理由の多くはカスタマージャーニーの整理が進んでいないためです。顧客体験文化を社内で醸成するためにも、顧客体験を上げるためにも、カスタマージャーニーの整理は非常に有用な手法です。しかし、
・どのジャーニーから整理したらよいかわからない。
・どこまで細かくジャーニーを書いたら良いかわからない。
・顧客のジャーニーは複数チャネルに跨ってマルチチャネルジャーニーなので自分の部署だけでは書けない。
といった、様々な疑問が出やすいのも事実です。一方で、顧客体験を継続的かつ効率的に改善できているCXリーディング企業ではすべからくこのマネジメントができているのも事実です。顧客体験戦略の要であるカスタマージャーニー・マッピングで効率よく顧客体験を改善してみませんか?
もっとよく知りたい方は、是非お気軽に当社までお問い合わせください。