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カスタマーサービスにおいてエフォートレスな体験は重要ですが、手間や労力を減らすという負の感情を減らす考え方ではなく、正の感情を増やすアプローチも重要です。今回のコラムではエフォートレスとは似て異なる「フリクションレスCX」について紹介致します。
内容
- フリクションレスCXとは何か
- コンタクトセンターにおけるフリクションレスなサービスとは
- フリクションレスとカスタマーエフォートレスの違いは何か
- フリクションレスCXの実践
・顧客の理解
・障害や摩擦が発生する接点の特定と優先順位付け
・プロセスの簡素化
・セルフサービスオプションの提供
・Webサイトやユーザーインターフェースの改善
・カスタマーサポートの強化
・一貫性の確保
・測定と最適化 - フリクションレスCXのメリット
1.フリクションレスCXとは何か
フリクションレスとは、顧客が企業のサービスを利用する時に、障害や摩擦を感じない体験をいいます。フリクションレスCXとは、顧客が企業のサービスを利用する際に、最初のエンゲージメントからサービスの利用を終えるまで、企業とのやりとりがシームレスで快適に利用できることをいいます。
フリクションCXの管理では、顧客が体験する、企業との一連のやり取りの中で、これを妨げる可能性のあるものを特定し、取り除くことも含まれます。
2.コンタクトセンターにおけるフリクションレスなサービスとは
顧客が体験する、企業とのやり取りの中には、ほとんどの企業が、コンタクトセンターが提供するサービスが含まれていると思います。
例えば、顧客がサービスの内容についてコンタクトセンターに連絡をする場合には、コンタクトセンターが「フリクションレス」を実践することが求められます。
顧客がコンタクトセンターに電話をかけた際に、オペレーターが対応するまでに長い時間待たされることや、顧客からの質問に対し、適切な回答を迅速にできないなどは、顧客のフリクションとなります。
フリクションレスのためには、顧客が電話し、オペレーターに接続するまでの時間(サービスレベルやASA)を適切に管理し、顧客の質問に正しい回答ができるように、十分なトレーニングを実施することや、オペレーターを支援するためのツールの導入することが必要になります。また、フリクションレスなサービスとしては、デジタルチャネルの活用やオムニチャネルの整備も重要となります。
顧客が利用する、FAQシステムは、操作方法がわかりやすく、画面表示も見やすく、内容もわかりやすいことを考え、設計・構築をすることや、チャットボットで問題が解決しない場合には、シームレスで有人対応のチャネルに接続できるようにしておくことも重要となります。
フリクションレスなサービスは、顧客に快適性と満足感を持ってもらい、顧客ロイヤルティを向上させる効果があるとされています。
3.フリクションレスとカスタマーエフォートレスの違いは何か
同じような意味合いとして、カスタマーエフォートがあります。カスタマーエフォートは、顧客の労力や手間という意味で、顧客の目的を達成するために顧客がする苦労や手間のことをいいます。
この手間をできるだけ少なくすることや、削除することで、顧客のエフォートを少なくする(エフォートレス)ことができます。
フリクションレスとカスタマーエフォートの違いは、カスタマーエフォートは、顧客の負の感情となる要素を減らすことを目的としているのに対し、フリクションレスでは、顧客の正の感情を増やすことを目的としている点に違いがあります。
また、カスタマーエフォートレスでは、カスタマーエフォートスコアーを利用し評価することが多いですが、この評価は、顧客の主観的な評価に基づいて測定されていますが、フリクションレスCXでは、顧客の行動やデータに基づいて測定されるという点でも違いがあります。
4.フリクションレスCXの実践
フリクションレスCXの実践では以下がポイントとなります。
・顧客の理解
顧客の理解では、サービスを利用する顧客(対象となる顧客)、顧客に発生している問題、顧客の期待など、顧客の理解が重要となります。
・障害や摩擦が発生する接点の特定と優先順位付け
カスタマージャーニーマップやサービスジャーニーマップを作成し、顧客と企業の接点を明確にします。接点で発生している問題(プロセスが複雑、待ち時間が長い、情報が分かりにくいなど)を分析します。発生している問題が複数ある場合には、影響度度合いと発生頻度などから優先順位付けを行います。
・プロセスの簡素化
内外のプロセスに対し、プロセス監査などにより、プロセスの簡素化や合理化を行い、顧客の障害や摩擦の原因となるボトルネックや非効率なプロセスを改善します。
・セルフサービスオプションの提供
日常のタスクの自動化や、セルフサービスのオプションを提供し、顧客対応の効率化を向上できるITシステムの導入を行います。また、顧客がセルフサービスツールを利用し、情報を自分で見つけられるようにします。
・Webサイトやユーザーインターフェースの改善
WebサイトやFAQ、チャットボットなどのデジタルインターフェースをユーザーフレンドリーとなるように改善することや、応答性、回答精度の向上をします。
・カスタマーサポートの強化
応答性が良く、よくトレーニングされたオペレーターが対応し、迅速に回答ができるようにします。そのためには、オペレーターの研修や、オペレーター支援ツールの導入を行います。また、チャット、電子メールなど、複数のチャネルが提供できるようにします。
・一貫性の確保
全ての顧客チャネルにわたって一貫性を確保します。一貫性には、製品の情報やブランドの設定などが含まれます。
・測定と最適化
パフォーマンス状況をモニタリングし、改善を行い、変化する顧客のニーズに対応し柔軟性と機敏性を保ちます。
5.フリクションレスCXのメリット
コンタクトセンターでは、カスタマーエフォートレスは重要ですが、発生した事象に対し改善を行う場合が多いため、フリクションレスCXにより、顧客の行動データや測定データから事前に問題箇所を発見し、改善することで、カスタマーエフォートレスの対応を事前に行えます。
フリクションレスCXとカスタマーエフォートレスをバランス良く利用することで、より高品質なCXを顧客に提供することができます。
言葉は違えど同じ考え方で顧客体験向上に取り組まれている組織も多いのではないでしょうか。どのような方法が効果的か日々皆様の組織で継続的に改善に取り組まれているかと思いますが他社がどうしているのか?あるべき姿は?そもそも顧客は何と言っているのか?などはこれらの改善の良質なインプットになり得ます。
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