プロシード通信は、CXを上げるためにポイントとなる考え方やヒントをお届けする連載コラムです。
COPC社による最新のグローバル調査から「優れた」SV・リーダーは、従業員満足度を5倍、定着率を12倍高められることがわかりました。前回に引き続き「優れた」SV・リーダーは、どのような取組みを行っているか、組織はどのようにマネジメントしているかお伝えします。
前編(前回)の内容
①こんなに!?SV・リーダーがオペレーターに与える影響の大きさ
②採用クオリティにも一役買える!SV・リーダーの採用に関する役割
後編(今回)の内容
③見直していますか?SV・リーダーが管理するオペレーターの適正人数
④メリットしかない!one on oneのすゝめ
①こんなに!?SV・リーダーがオペレーターに与える影響の大きさ
見直していますか?SV・リーダーが管理するオペレーターの適正人数近年、各コンタクトセンターでデジタル化が飛躍的に推進し、組織に様々な影響を与えました。
その一つに、ヒューマンチャネルにおけるカスタマーサポートの難易度が高くなったことが挙げられます。これまでオペレーターはお問い合わせをされた顧客に対して「決まったことを決まった通り」に案内することを求められてきました。
しかし、そういった内容はデジタルサービス・チャネルで解決されやすくなりました。そこで解決
されなかった難しいお問い合わせがオペレーターへ入りやすくなったため、オペレーターが従来通り
「決まったことを決まったとおり」に案内するだけでは顧客が満足しないケースが増えてきています。
弊社が昨年、COPC社と合同で行ったグローバル調査の結果ではデジタルチャネルの初回解決率は40%でした。おおよそ半分あるいはそれ以上のお問い合わせは「決まったことを決まったとおり」に案内するだけでは解決することができないとも言えます。
そんな応対難易度が上がっている状況の中、適切な分析を行わず“これまでこの人数でやってきたから”という理由でSV・リーダーが一人当たり管理するオペレ―ターの人数の見直しをかけないのは、様々
な問題を引き起こす可能性があります。
例:
・エスカレーションの対応に追われ本来SV・リーダーとしてやるべきことができない
・SV・リーダーが忙しいため、オペレーターが相談しにくい
・オペレーターとSV・リーダーのコミュニケーションが減りストレスが溜まる
・オペレーターの欠勤・離職の増加、人不足による継続的な新人採用
・採用された新人サポートが十分にできず早期離職の増加 → 採用 → 悪循環
では現在、世界のコンタクトセンターはどれぐらいの比率で運営されているのでしょうか?
上述したCOPC社との合同の調査によると「オペレーター16人に対してSV・リーダー1人」という割合
でした。弊社がCOPCの認証審査などで見てきた経験としては、
・COPC認証を取得できる - オペレーター:SV=5人:1人
・COPC認証を継続して取得できる - オペレーター:SV=7人:1人
・COPC認証がなくとも継続的な改善が可能 - オペレーター:SV=10人:1人
が経験則に基づく平均的な数字であり、上述の背景もあることから、今回のグローバル調査の結果には驚きました。
ナレッジマネジメントの強化、AIのオペレーターサポート活用、モニタリングなどの管理プロセス自動化、採用や研修などの人材管理プロセスの強化など様々な要因が考えられますが、SV業務の棚卸、各業務の費用対効果や優先度を分析されそれをもとに改善を行っている管理費用効率が高い組織が多い結果とも推測できます。今のSV管理人数比が16人:1人よりも低い比率であれば、改善機会があることを意味しているかもしれません。
最後に今のSV・リーダー一人当たりの管理人数を見直す際に、一般的に行われている分析のアプローチについてご紹介します。
A:業務の洗い出し(役割・定義との整合性確認)
B:実態調査(動態チェックによる個人別業務のバラつき・属人化の有無確認)
C:全体工数の算出および最適人数の見直し(または役割・定義の見直し)
SVの方々から「最近忙しい…」という声が上がっていませんか? それは、業務量が特別増えたりする
イベントや、例年業務量が多くなる時期以外の時ですか?
顧客の変化に伴ってSVの業務もアレンジしていくべきです。
是非このようなアプローチを参考に今の管理人数比が自社にとって適正か分析にお役立てください。
②メリットしかない!one on oneのすゝめ
様々な組織で活用されているone on oneですが、こちらもCOPC社と合同でおこなった調査より非常
に大きな従業員体験に対してのメリットがあることがわかりました。
one on oneの効果:one on oneなどの体系的なパフォーマンスレビューを受けているオペレーター
はそうでないオペレーターに対して…
(左)「従業員満足度」が1.5倍高い(1か月1回受けているオペレーターと受けていないオペレーター比)
(右)「組織は十分な成長機会を与えてくれている」と感じる確率が2.4倍高い
これらの効果はone on oneの内容に関わらず出ているものであり、どれだけone on one が組織に
ポジティブな影響を与えるかが伺えます。なお頻度については以下の通り高いほどポジティブ
な影響を与えることがわかっています。
One on oneの頻度と従業員満足度(TOP2BOX)
今回のコラムでは弊社によく頂くone on one関連の質問をもとに、その運用のコツについてお伝えいたします。
A.頻度は多ければ多いほど良いのか?
上述の通り毎年より毎季、毎季より毎月、毎月より毎週と従業員満足度は上がっていますが、むやみやたらに数をこなせばよいという話ではありません。SV・リーダーが自身のチームの課題を見つけそれを改善する際のアプローチとしてone on oneを活用することが大事です。その仮定で特定のグループに
対してone on oneの頻度を上げていくことがおすすめです。
例:ベテランのミスが増えている ← ベテランへのone on one強化
在宅勤務の従業員の離職が増えている ← 在宅オペレーターへのone on one強化
※並行してセンターとして最低季一回などのルールは設けるべき
B.頻度高くやった場合飽きられないか?SV・リーダーが話題作りに困らないか?
one on oneが適切に運用できていない場合のリスクとして確かに「毎回話題が同じ」「効果が
見えない」「指摘ばかり」などの理由からオペレーターにネガティブなイベントとして受け取られる
可能性はあります。
SV・リーダーのコミュニケーション/コーチング力が求められるところですがSV・リーダーの育成
だけではなく、one on oneの対象を変えることもおすすめです。
例:ナナメone on one → 別チームのSV・リーダーとone on oneをする
一つ飛ばしone on one → スキップレベルミーティングのように、SV・リーダーの上司と
オペレーターがone on oneを行う
C.one on oneの効果はどのように測定するか?
定量的パフォーマンス指標であれば、設定されたオペレーター個人の目標に対する達成率や指標の
伸び率などが一般的です。また新人であれば組織の平均的な学習曲線に対する個人の学習曲線など見る場合もあります。(例:AHT)
ただし、コミュニケーションが目的で行っている場合や複合的な要素が影響する指標の場合、無理
やり定量的な効果を測定してその結果、効果が出ていなければ「one on oneのやり方が悪い」
「効果がない施策だ」と決めるけるのは早計です。上述の通り離職率、満足度含めた従業員体験全般に効果が出る調査結果もあります。例えば、関連する従業員アンケート調査の項目の回答結果の推移などを見て効果の有無を多角的に判断していくことが望ましいです。
二回に渡ってSV・リーダーを取り巻く環境や、求められるスキルなどについてお伝えしてきました。
SV・リーダーはセンターの上位マネジメント層とオペレーターの架け橋となる非常に重要な役割を担います。業務の実行面(WHAT)はもちろん、組織の方針や理念、パーパスを伝える(WHY)役割もあります。
ですが、弊社が昨年行ったWell-being CUSTOMERCENTER AWARD2022によると(93センターが参加)幸福度が低い組織ではSV・リーダーの「会社好き度合い」がオペレーターよりも低い特徴があることがわかりました。架け橋となるべきSV・リーダーが会社に愛着を持てていない組織はどのような改善をしていけばよいのでしょうか?
国内の他センター、国内センターの他SV・リーダーと自社を比較できるWell-being CUSTOMER CENTER AWARDへご参加頂けると現状の(課題)把握を頂くことができます。
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