プロシード通信は、CXを上げるためにポイントとなる考え方やヒントをお届けする連載コラムです。
注目度が上がっている「Well-being」について皆さまも一度は聞かれたことがあるのではないでしょうか。弊社ではWell-beingもカスタマーセンター(以下:センター)が顧客へ継続して良い体験を提供し続けるために重要であると考えています。
また、Well-beingなセンターを増やすことで、カスタマーサービスの向上につなげるために2021年から国内で最も幸福度の高いセンターを決めるアワード(※)を開催しております。
今回のコラムでは、昨年のアワードの統計結果から国内のセンターが抱える課題について紹介させて頂きます。
ぜひ、みなさまのセンターにおいてもマネジメントにご活用頂ければ幸いです。
※アワード=Well-being CUSTOMER CENTER AWARD
国内のセンターが抱える課題や現状
- センターの幸福度は日本全体の数字よりも低い
- 幸福度が高い組織と低い組織で最も違いのある感情は「自社への誇り」「社会貢献実感」「働きがい・心身の充足感」
- 働きがいは幸福度と強く相関し、働きがいと強く相関するのは「成長の実感」「長所の発揮」「達成感の実感」
- 幸福度が低い組織では、長く働くほど「仕事好き度合い」が下がる
- 幸福度が低い組織では、すべてのポジションの中で「SV・リーダー」が最も「会社好き度合い」が低い
弊社が考えるWell-beingとは?重要とされる背景>
はじめに
今回のコラムで紹介している数字などについてまずは紹介します。
ソース
以下の統計結果は上述のアワードにご参加頂いた93センター、6,249名のアンケート回答結果に基づいています。
アンケート
アワードは弊社オリジナルのWell-being診断(従業員アンケート調査)を実施頂いたセンターのスコアをランキング化するものです。アンケートの設問には以下の3種類があります。
幸福度:あなたの人生の幸福度に今の職場や仕事で過ごす時間は良い影響を与えていますか?という設問に対して0~10の11段階スケールで回答頂くもの
総合設問:幸福の感じ方を把握するための7つの設問
Well-being7つの要素:仕事を通じて幸福度の向上/Well-beingの実現を行うために重要な7つの要素(全42設問)
数値
本コラムにて紹介する数字は3種類あります。
- 平均値:幸福度の計算は悪い評価も良い評価も含めて把握できるよう0~10それぞれの回答の平均にて分析しています。
- TOP2BOX:総合設問、Well-being7つの要素は1~7の7段階スケールで調査を行っています。各設問に対して肯定的に感じている方の人数の割合を把握できるように、6:そう思う、7:とてもそう思うと回答した方の割合であるTOP2BOXにて分析しています。
- 相関係数(R):二つの設問間の繋がりの強さを示すため相関係数にて分析しています。
相関係数は1.0に近いほど相関が強いことを示します。
※例:+1.0=一方の設問の回答が高いともう一報の設問の回答も高くなる傾向がある
①センターの幸福度は日本全体の数字よりも低い
2022年度の国際連合の持続可能開発ソリューションネットワークが発行する、幸福度調査のレポートによると日本全体の幸福度は6.04でした。それに対して2022年度の弊社アワードでは国内センターの幸福度は5.57という結果でした。また、アワードとは別に昨年末弊社が実施したアワードに参加していない533名のセンター従事者に調査を行ったところ幸福度は4.64という結果でした。この結果は、
①従業員はセンターで働くことで幸福度は国内平均よりも低くなる
②取組みを開始(アワードに参加している)組織とそうでない組織にすでに大きな差が開いている
という可能性を示唆しています。
②幸福度が高い組織と低い組織で最も違いが感情は「自社への誇り」「社会貢献実感」「働きがい・心身の充足感」
課題はどこにあるのか?という観点から続いて幸福度の高い組織と低い組織の差を紹介していきます。まずは総合設問です。総合設問は「幸福の感じ方」を表す設問です。
以下が93センター(38組織)における幸福度が高い上位25%(左)の組織と下位25%(右)の組織でTOP2BOXを比較した結果です。
下位組織でとくに低かった設問は上記図で赤い矢印がついている4つの設問でした。カスタマーセンターは直接お客さまから感謝を受けることが非常に多い職種ではありますが1人1人の仕事がどのように社内・社会に貢献できているか見えにくい特徴もあります。それが自社サービス・商品を誇りに思えないことに繋がり、さらにそれが働きがいや心身の充足感の欠如に繋がっているのかもしれません。
③働きがいは幸福度と強く相関し、働きがいと強く相関するのは「成長の実感」「長所の発揮」「達成感の実感」
次にご紹介するのは。最も幸福度と相関する総合設問についてです。アワードの結果を分析した結果「働きがい」であることがわかりました。
当たり前といえば当たり前ですが、ただ単に「この職場で働き続けたい」と思えることよりも、「日々働きがい」を感じられることのほうが、仕事を通じて人生が豊かになっていると思えやすい結果になりました。
では、この働きがいにはどのような要素が重要なのでしょうか。
Well-being7つの要素の全42問と「働きがい」の相関係数を計算したところ右の3問が最も高い結果となりました。
この結果はすべての役職、在職期間、性別、雇用形態、出勤形態(在宅か出社か)を含めたすべての結果を用いて計算したものであり、これらの設問がセンター従事者にとって重要である可能性は非常に高いことを意味します。
1と2は想像に難くないかと思いますが、3はいかがでしょうか。仕事での役割を果たすことに達成感を感じるのは自然なことのように思えますが、相関係数が高いということは「幸福度が低い方は仕事での役割を果たしても達成感を味わうことができていない」ことを意味します。上述の通りそもそもサービスや商品に誇りを持っていなかったら、あるいはその仕事を行うことでどう役立っているか理解できていなければ達成感が欠如している可能性があります。WHAT(何をするか)ではなくWHY(何故するのか)が重要であるとも言うことができると弊社では考えております。
最後にご紹介するのは、なぜ上述のような結果になっているのか?という観点で分析した、幸福度が高い組織と低い組織のWell-being7つの要素の比較結果です。Well-being7つの要素は「仕事好き」と「会社好き」の二つの要素に分かれています。始めに「仕事好き」の要素からご紹介します。
④幸福度が低い組織では長く働くほど「仕事好き度合い」が下がる
仕事好き要素の中には「学びと成長」「認め合い」「チーム力」「能力の発揮」の4つの要素が含まれます。幸福度が高い組織では在職期間が長くなるにつれてTOP2BOXに明確な動きはありませんでした(横這いあるいは、微増)。それに対して幸福度が低い組織では明確に右肩下がり、つまり働くほどにそれぞれの要素が下がっていました。
働く時間が長くなるほど、
・できることも増え日々の仕事の中で学ぶことも増える、
・隣の席・部署で一緒に働く仲間のこと、その仕事への理解が深まり尊敬・尊重の念が増す、
・苦楽を共にしてチーム力が高まる
が理想ではありますが幸福度の低い組織では大多数の従業員においてそのような状況にはなっていない結果でした。
⑤幸福度が低い組織ではすべてのポジションの中で「SV・リーダー」が最も「会社好き度合い」が低い
会社好き要素の中には「会社との信頼関係」「健全な職場」「ワークライフサイクル」が含まれます。幸福度が高い組織ではオペレーター→SV・リーダー→マネージャーと役職が上がるにつれてそれぞれのTOP2BOXも上がっていましたが、幸福度が低い組織ではオペレーターよりもSV・リーダーが低くい結果となりました。
SV・リーダーは組織の方針も設計されたオペレーションも(上述のWHYもWHATも)現場へ落とし込む重要な橋渡しの役目を担う役職です。幸福度が低い組織ではこの重要な役職の方々の「会社好き度合い」が低い結果となり、上述の課題の原因の一つである可能性があることがわかりました。
弊社では、従業員のWell-beingは会社から従業員へ与えるものではなく一緒に作り上げていくものだと考えています。そのためにはまず会社が主体的に「働きやすさ」を高める施策を講じ、次に従業員も巻き込んで共に「働きがい」を創造し、そのうえで継続してそれらが更に高まるように「Well-being」を実現していくことが重要と考えています。
そのためにはまずは現状を理解することが大事です。自社の改善機会はどこか?今後更に伸ばすべき自社固有の強みはなんなのか?理解できることがそのあとの施策の効果に直結します。5月1日より正式にエントリーが開始する本年度のアワードにご参加頂けると国内のセンターと自センターのWell-being関連指標を比較することが可能です。
この機会に皆様よりご参加頂けることを願っております。
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