プロシード通信は、CXを上げるためにポイントとなる考え方やヒントをお届けする連載コラムです。
前回のコラムでは、国内センターのWell-beingに関する課題を紹介させて頂きました。今回のコラムでは「幸福度が高いセンターのWell-beingに関する取組み」とその「具体例」について紹介させて頂きます。是非皆さまのセンターでの取組みにご活用頂ければ幸いです。
※このコラムは3月27日に旧楽天モバイルカスタマーサービス株式会社 オペレーション本部 スタッフエンゲージメント部 部長 吉田 久美子氏(以下:吉田氏)をお招きして開催したWell-being CUSTOMER CENTER AWARD白書2023解説セミナー後編の内容に基づいております。
Well-beingに関する取組みの三大ポイント
- 年間計画と全ての施策の基になるベースの考え方(方針)を定義する
- 行う活動に全てに仕掛けを作る
- 施策は3種類の観点で作る
前回のブログ「Well-beingに関する国内センターの現状と課題」>
①年間計画と全ての施策の基になるベースの考え方(方針)を定義する
始めに重要になるのが年間計画と方針の定義です。その他のプロジェクトにも関連する重要な要素ですが、行きあったりばったりにならないように、また目標を見据えて細かい活動が行えるように方針・目標を定義し、それを達成するための逆線表をひいて計画を立てることが重要です。
方針・目標はグループ、会社、部門などですでに定義をしている場合それと整合するものにする必要があります。そこに心から共感して頂くことが自社サービス・商品の誇りへつながり、それがまた自分の仕事が社内外へ貢献できている実感につながるからです。
グループ、会社、部門で方針がない場合でも活動のスローガンなどを定義する必要があります。スローガンを新たに作る場合は「達成したい姿・理想的な姿」をプロジェクトチームでポジティブに思い描きながら作るといいでしょう。
吉田氏の部署では、グループ・会社の目標を達成するために、⽣き⽣きと安⼼して⻑く働ける環境整備を目的に 「会社の思い・従業員の気持ちの“橋渡し”をする」をスローガンとしてそれぞれの施策を設計されました。
②行う活動に全てに仕掛けを作る
年間計画で細かい活動を設計・企画していきますがその際に前述の「思い」と活動が整合しているかをベースとして、仕掛けを作ることが重要となります。仕掛けは言い換えると活動の裏目標です。例えば「ウォーキングラリー」をやる場合活動自体の目標は「○○までみんなで歩いていく」などになりますが、企画側の裏目標は別であるべきです。方針声明の浸透であれば、それに沿ったスタンプラリーを用意したり、コミュニケーションの活性化であれば、チーム対抗戦にしたり、裏目標の内容によって「やり方」を変えるべきです。重要なのは「何をやるか」ではなく「どうやるか(やり方)」です。
吉田氏の部署でも施策に仕掛けを作られました。以下はその一例です。またそれぞれの施策は裏目標に沿っているかネーミングにもこだわられて企画されていました。 ・七夕イベント「おり姫ひこ星を探せ!」/目標:コミュニケーションの活性化・インフォーマルグループの形成、強化 各従業員に自分のおり姫あるいはひこ星を社員の中から設定し、相手を期間中に探し出すイベント。 各従業員はいくつかの相手の特徴(例:○○に最近ハマっている)のみを知らされており、会話の中で誰か探していくことが求められる。 ・社内報「ZUNDA TIMES」/目標:社内の認め合い、チーム力の促進、向上・愛社精神の醸成 従業員へのインタビューを中核とした社内報。インタビュー内容は業務へのこだわりなど。他にも、近隣のランチスポットや直近のイベントなども掲載。紙、Webそれぞれで準備し表紙を含めた掲載写真は女性誌のように「おしゃれ!」に表現している。 カスタマーセンターに限らず隣のチーム、部署は普段どのような仕事をしているか?自分たちの仕事とどうかかわっているのか?どのような気持ち・目標で仕事をしているのか?わかっているようでわかっていないものです。 これが理解できていないと「あの部署は遊んでばっかり」や「無理難題ばっかり押し付けてくる」、「現場のことを理解していない!」などの誤解に繋がりかねません。相手の人となりだけでなく、どんな仕事をしているのか?やどのような思いで仕事をしているのか?など業務に関する一面を知ることで、同じ目標に向かって仕事をする仲間として認め合い、協力して仕事をするために効果的です。
③施策は3種類の観点で作る
最後に重要になるのが施策を設計する際の観点です。
Ⓐ会社から従業員への施策
Well-beingなカスタマーセンターを目指すうえでまず必要になる観点です。顧客満足(体験)の考え同様、重要な要素(満たされれば満たされるほど良いもの)はありますが、基本的な要素(満たされなければ不満につながるが、満たし続けても効果を失うもの)に先んじて取組む必要があります。
電話応対に置き換えると基本的な要素がマナーやスピードで、重要な要素が解決力などになります。解決力が満足レベルだったとしても、礼節を欠いたもの、あるいは回答に時間がかかりすぎれば満足につながりません。
まずは会社から率先して従業員に対して働きやすい職場を整えるための施策を講じていくことが重要です。
吉田氏の部署では以下のような取組みをなされておりました。 ・タウンホールミーティング ・事前に決めた合言葉を自分事にして宣言する動画の撮影、共有 ・ポータルサイトの運営 また、これらのみならず各部署が従業員の方とコミュニケーション(新プロセスの設計、施策の落とし込みや通知などすべて)をとる際の橋渡し役として意見を伝え、改善を推進されていらっしゃいます。
Ⓑ従業員から会社への施策
続いて重要になるのが従業員から会社への施策です。きっかけは会社から与えたとしても従業員を巻き込んでAの活動のレベルをあげていくことが重要になります。顧客ロイヤルティ同様、フィードバックした内容が採用されサービス・商品が改善されればブランド・商品への愛着は増します。
従業員の仕事や会社に対する愛着も「一緒に作り上げた」「私が貢献できている」と思えるかが重要です。そのためには従業員から会社への施策が効果的でこれが働きがいにもつながります。
吉田氏の部署では以下のような取組みをなされていました。 ・従業員代表コミッティの立ち上げ ・(従業員投票の結果)記名式に変更した目安箱あらため改善提案箱の運用
Ⓒ従業員から従業員への施策
最後に重要になるのが従業員から従業員への施策です。B同様きっかけは会社から与えるケースもありますが、さらに組織を活性化するためにはお客様のため、会社のためだけではなく、仲間のために従業員同士が積極的に動くことが重要です。
最初から他部門と仕事を主語としたコミュニケーションができれば良いですがまずは段階的(まずはお互いの人となりを知ることから)に始めることが現実的です。
吉田氏の部署では以下のような取組みをなされていました。 ・川柳コンテスト ・ボーリング大会 ・アートコンテスト
Well-being、従業員エンゲージメント、従業員満足度など呼称は違えど現状国内の多くの組織は独立した部署ではなく兼任で本テーマに取組まれているのがほとんどです。忙しくてやりたくてもやりきれなかったり、多くのイベントを企画しても「遊んでるの?」と誤解されたりすることもあります。各組織の文化や風土、現状に合わせる必要もあるため、これ という回答はないですがまずは上記の3点を抑えて施策を企画していくこと、その仮定で管理層内で共通認識を醸成していくことができれば全員でもっと良くしていく文化が根付いていきます。思いが言葉に、言葉が行動に、行動が習慣に、習慣が性格(≒組織文化)に繋がっていきます。
なお上述した「現状の把握」については、5月1日より正式にエントリーが開始する本年度のアワードにご参加頂けると国内のセンターと自センターのWell-being関連指標を比較することが可能です。
この機会に皆様よりご参加頂けることを願っております。
Well-being CUSTOMER CENTER AWARD2023の詳細についてはこちらから>