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有人でもデジタルでも顧客体験を向上させるKCSとは?導入効果と活用

2025.04.09

KCSとは、日々の業務で生み出されるナレッジを組織全体で共有し活用するためのフレームワークです。従来のナレッジ管理とは異なり、マニュアル作成が目的ではなく、顧客対応の過程でリアルタイムにナレッジを生成・進化させる点に特徴があり、導入により、初回解決率の向上、新人教育期間の短縮、従業員満足度の向上など、多岐にわたる効果が期待できます。更には、FAQやChatbotなど近年のAI技術による応対の自動化にも活用が可能です。

近年では、AI技術の発展や顧客の自己解決ニーズの高まりを背景に、KCSは顧客体験の向上と業務効率化を実現する手法として注目されています。

本コラムを通じて、KCSの基本概念および注目されている背景から、具体的な効果、導入のポイントまで解説いたします。

KCSとは?顧客中心のナレッジ活用

KCS(Knowledge-Centered Service)ナレッジマネジメントのフレームワークです。1992年に、カスタマーサービス分野の非営利団体であるサービスイノベーションコンソーシアムによって提唱されました。

近年では、その有効性が広く認識され、KCSが様々な組織で活用されはじめています。KCSは、従来の知識データベースとは異なり、顧客からの問い合わせに対応する中で得られた具体的な解決策を重視する「ソリューションデータベース」の活用を前提としています。固定的な情報を提供するのではなく、状況に応じて柔軟な対応策を提示することを目的としており、多様化し複雑化する現代の問い合わせに対応するために不可欠な考え方です。

KCSの根底にあるのは、「知識は業務の副産物として生成される」という理念です。日々の顧客対応業務の中で、オペレーター自身がナレッジを生成し、進化させることで、常に最新かつ現場に即した情報が活用可能になります。

KCS=マニュアルを作る ではない

KCSは、従来のナレッジマネジメントのように、網羅的で完璧なマニュアルを事前に作成することを目的としたものではありません。むしろ、日々の顧客対応という「業務」の中で、問題解決に必要な知識を「捉え(Capture)」、再利用しやすいように「構造化(Structure)」し、実際に「再利用(Reuse)」することで、ナレッジを「改善(Improve)」していくという継続的なプロセスを重視します。FAQに回答がない場合、オペレーターがまず質問内容を登録し、ナレッジ作成者が回答を作成・登録するという「ジャスト・イン・タイム」の考え方がKCSの大きな特徴です。これにより、問い合わせの発生とほぼ同時にナレッジが蓄積され、状態を目指します。

従来の「ジャスト・イン・ケース」型のFAQ作成とは異なり、KCSはリアルタイム性と現場での活用を重視します。当社ではこの動的なナレッジ生成こそが、変化の激しいビジネス環境において顧客満足度を維持・向上させるための鍵となると考えています。

なぜ注目?AI利活用と顧客ニーズ

KCSが近年特に注目を集めている背景には、いくつかの要因があります。

  • 業務の複雑化
    ビジネスモデルや顧客からの問い合わせ内容も高度化・多様化している背景から、従来のFAQやマニュアルだけでは対応しきれないケースが増加しており、より実践的なナレッジ活用が求められています。
  • 顧客のサービスに対するニーズの高まり
    顧客は迅速かつ正確な問題解決を期待しており、自己解決を好む傾向も強まっています。このようなニーズに応えるためには、顧客がFAQやサポートポータルを通じて素早く解決策を見つけられるナレッジ基盤が不可欠であり、KCSのプロセスが非常に有効です。
  • AI技術の急速な進展

KCSによって蓄積・構造化された高品質なナレッジは、AIチャットボットやFAQシステムと連携することで、顧客の自己解決を促進し、有人対応の負荷を軽減する効果が期待できます。当社ではKCSとAI技術の組み合わせが、次世代の顧客体験を創造するうえで一つのカギとなると考えています。

導入効果:生産性向上と顧客満足度

KCSを導入することで、コンタクトセンターをはじめとする顧客対応の現場では、多岐にわたる効果が期待できます。今回のコラムではその一部をご紹介します。

  • 生産性の向上
    オペレーターが過去のナレッジを迅速に検索し活用できるようになるため、回答時間の短縮や初回解決率の向上につながります。重複した問い合わせ対応やエスカレーションの減少により、業務効率が大幅に改善されます。
  • 顧客満足度の向上
    迅速かつ正確な対応が可能になることで、顧客の不満を軽減し、信頼感を高めることができます。オペレーターによる回答の品質も均一化され、誰が対応しても一定の品質を保つことが可能になります。
  • 属人化の防止や新人教育期間の短縮、従業員満足度の向上などのEX向上
    ナレッジを組織全体で共有・活用するため、特定担当者に依存する属人化を防ぎ、誰でも一定品質の対応を可能にします。仕事が効果的・効率的になることから従業員の仕事に対するエンゲージメント向上に繋がります。また、FAQが充実し活用されることで、新人でも必要な情報にアクセスしやすくなり、OJTの負担を減らし教育期間を短縮します。さらに、ナレッジ作成・改善への貢献が評価されたり、重複作業が減り創造的な業務に注力できることで、従業員のモチベーションと満足度が向上します。

プロシードが支援するKCS導入と活用

当社では、お客様の顧客対応における課題解決と更なる成長のために、KCSの導入から運用、定着化:現状の課題を把握するための診断から、改善を進めるための研修・伴走支援までトータルにサポートしております。

KCSの理念に基づき、お客様の組織文化や業務プロセスに合わせた最適なKCSワークフローを設計し、コンテンツスタンダードの策定やKCSコーチの育成などを通じて、お客様が自律的にKCSを推進できる体制づくりをご支援いたします。また、FAQナレッジシステムの選定や導入支援、既存システムとの連携、AI技術の活用に関するコンサルティングも提供しております。

詳しくは以下をご覧ください。

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