COPC CXコンサルタントのコラムから
今回は、前回にひきつづきCOPC社のコンサルタントのコラムから「顧客中心主義の視点からのチャネル戦略」についてご紹介します。2回目の今回は、「お客様の求めるチャネルとそこで実現できることが期待される機能」についてのお伝えします。
お客様に正しいチャネルでのコンタクト機会を提供できているのか?あるチャネルを用意しているのはなぜなのか?長期的なチャネル戦略はどうあるべきなのか?といった問いに答えられず、模索を続けている組織は多くあります。ともすると、最新のコンタクトチャネルの提供を開始することに興奮し達成感を感じることがあるかもしれませんが、落ち着いてお客様の視点で考えることがチャネル戦略を検討するうえでは大事です。
チャネル戦略を考えるうえでは4つの本質的な質問があります。このシリーズでは、その4つの質問についての検討を進めていきます:
Part 1: 自社の提供する顧客対応チャネルとお客様が利用しているチャネル
Part 2: お客様の求めるチャネルとそこで実現できることが期待される機能
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Part 2: お客様の求めるチャネルとそこで実現できることが期待される機能
私たちの組織のお客様は何を求め、期待しているでしょう。とても単純な質問です。ですが、この質問に対する真実の答えを見つけるのはそんなに簡単ではありません。とはいえ、幸運にも、答えを得るための方法は複数あります。その中には、ベンチマーキング、消費者調査、顧客アンケート調査、フォーカスグループが含まれます。ベンチマーキングと消費者調査は一般的に、基本的な方向性や仮説を立てるのに有効です。一方、顧客アンケートやフォーカスグループは、自社のお客様についての情報を得て、お客様の求めるものや期待について掘り下げた情報を得ることができます。これらの手法について、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
ベンチマーキング
ベンチマークングは、お客様が何を求め期待するかの基礎的な情報を得るのに有効な手法です。短い時間、少ないリソースで実施が可能です。そのため、最初のステップとして活用されることが多い手法です。直接の競合や業界をリードする組織が提供していることを知ることで、お客様が何を当たり前のように期待するようになってきているのかが分かります。この活動により、個別のチャネル提供に関する展望が理解できるだけではなく、そのチャネルにどんな機能をお客様が期待するのかも理解することができます。
例ですが、アマゾンやウォルマートといった有名なマスマーケットの企業が、オンラインチャットを提供しているのであれば、他の企業のお客様も同様のオプションの提供を求めていると考えるのが自然でしょう。もちろんお客様のデモグラフィック(プロファイル)やその他の条件によるところもありますが。同様に、ある組織の主要な競合が、双方向のコミュニケーションといった最新の機能を持つ素晴らしいモバイルアプリを提供しているとき、お客様は同じ業界の他の企業に対しても同様のものを期待するでしょう。
消費者調査
ベンチマーキング同様、消費者調査もベースラインの調査としては非常に有効な手段です。自社のお客様や対象セグメント用に設計されたカスタムメイド調査を実施する組織もありますが、一般的なCX関連の調査結果を利用することも可能です。既存の調査の一つの例は、COPC社がExecs In The Knowと共同で継続的に実施している調査プロジェクトであるカスタマー・エクスペリエンス・マネジメント・ベンチマーク(CXMB)シリーズです。図1と2は、その最近の調査の例で、一般的に顧客が何を好むのかを示しています。図1は一般的なチャネルに関する選択傾向を、図2はモバイル機器に関しての選択傾向を示しています。
図1:米国の消費者の好むコンタクトチャネル 情報ソース:2017年カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント・ベンチマーク(CXMB)シリーズ 消費者調査版 -消費者の声:意見、認識と期待
上記図の「トラディショナル」は電話、電子メール、対面等を、「双方向」はオンラインチャット、セルフヘルプを、「モバイル」はSMS、モバイルアプリ、モバイルチャットを、「ソーシャルメディア」はツイッター、フォーラム等をそれぞれ指しています。
図2: 米国の消費者が好むモバイル機器でのコンタクト方法 情報ソース:2017年カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント・ベンチマーク(CXMB)シリーズ 消費者調査版 -消費者の声:意見、認識と期待
CXMBシリーズのより詳しい情報は、COPCのウェブサイトからResearchセクションをご覧ください。CXBMシリーズの過去の調査結果の無償版を閲覧することや、最新2017年度版のCXMBシリーズ消費者調査版 -消費者の声:意見、認識と期待 の購入がでできます。
顧客アンケート調査
ベンチマーキングや消費者調査を通じて、顧客の求めるものについてのおおよその理解ができたところで、組織は顧客アンケートを実施することで、仮設の検証を行います。
顧客アンケートはシンプルで、短く、異なる特性を持つ顧客のペルソナを代表するサンプルに対して実施することが求められます。アンケートはまた、顧客接点のチャネルをカバーする形で実施されることが求められ、チャネルによるバイアスが出ないよう実施することが必要です。言い換えると、電話を使っての対応のみを対象に調査を実施することでは、代替チャネルであるオンラインチャットやソーシャルメディアを活用するユーザー層の好みや期待が充分に反映されないことが想定できます。チャネルごとの機能の期待に関して調査する場合には、現在そのチャネルを利用しているユーザーに対して調査を実施することが最善です。、オンラインチャットのユーザーに対して、その組織の提供するモバイルアプリで支払いを行いたいかという問いをすることは、必ずしも入手したい情報を獲得することにつながりません。
顧客アンケートは、顧客が何を求め、期待しているかを明らかにするだけではなく、現状の顧客体験に関しての貴重な情報源となります。そしてそれは、現時点で提供しているチャネルのパフォーマンス評価を実施するうえでとても重要な情報となります。このあたりは次の回で詳しく掘り下げたいと思います。
フォーカスグループ
フォーカスグループは、ベンチマーキング、消費者調査、顧客アンケート調査から得た知識をすべて活用し、さらに深い情報を得る機会となります。ベンチマーキングと消費者調査からは一般的な情報が入手できますが、フォーカスグループはより具体的な「隠された事実」を見つけ出す機会を提供します。
フォーカスグループを実施する際に気を付けたいいくつかの点:
1) 既存顧客のみをフォーカスグループの調査対象としないこと。潜在顧客の求めるものや期待を合わせて入手すること。市場を代表する、多様なペルソナを対象に調査を行うこと。
2) 参加者を誘導することのないように気を付けること。そのためにすべての先入観を排除すること。ベンチマーキングや消費者調査、顧客アンケート調査の結果がフォーカスグループを導くことがあっても、参加者の意見を誘導することがあってはならない。
3) 全員が発言機会を持てるようにすること。フォーカスグループにより形成された見解が、一人の声の大きい参加者の意見により偏ることの内容にすること。
組織は、このような特定の方法での調査により収集された結果を得ることで、現状のそして未来の顧客が、サービス提供チャネルに関してなにを求めるのか、また現在提供しているチャネルで実現できることをどう評価しているかを理解することができるようになります。
今回紹介している顧客調査は、「顧客アンケート」を除いてはコンタクトセンターが直接かかわることは少なく、一般的にはマーケティング部門等が実践する手法であるかと思います。ただ、広い意味で「顧客の声」を集め、分析することで、サービスの設計(チャネル戦略を含める)を行っていくのは必要な活動であり、COPC CX規格の要求にも含まれています。COPC CX規格が「コールセンターの規格」から「顧客体験のマネジメント全体を包含する規格」になるうえで、顧客接点のすべてを見直すような視点を加えていくことは必要な活動です。「コールセンターの最適化」ではない「顧客接点の全体最適」をコールセンター側からも推進できるよう貢献していきたいと思います。
次回のトピックは「Part 3: 現在提供しているチャネルでの顧客体験」となります。
今回の英語の記事は以下になります。
https://www.copc.com/customer-centric-approach-to-channel-strategy-part-2/