様々なご支援先の方針や事業計画を拝見する機会がありますが、その多くで「CX」というワードが含まれています。この「CX(カスタマーエクスペリエンス)」というワードは、約4-5年前から目にするようになってきて、今では当たり前のように使われるようになりました。
しかし、いまだに、「CXとは何か?」の具体的な説明がない場合や、「皆さんでCXを考えてください」といった、それぞれで答えを考える=ある意味、丸投げ式の展開の仕方をしている組織もあります。また「CS」の延長線上が「CX」といった解釈もあります。
今回のコラムでは、CXとは何か、また「CS」との違いは、について解説したいと思います。
1.そもそもCXって何なのか?
言葉の意味を調べる、となると、「広辞苑(岩波書店)」が最初に思い浮かびます(これは年代によって違いがあるかもしれませんが)。しかし、残念ながら最新の広辞苑(第七版)には、「CX」は掲載されていません。
次に、Web検索を行いますが、なんとなく似たような表現を使っているように感じるものの、色んな意味にも受け取れて、なんだかよくわからない…となることが少なくないのではないでしょうか。
ではCXとは何か。それは言葉の通り、「顧客体験」を企業が高めることです。
顧客は、自らの要求を満たすために、企業から商品やサービスの提供を受けます。その商品やサービスに対する「体験」が、すなわちCX=顧客体験なのです。
身近なもので考えてみます。「お腹が空いた、手軽に温かいご飯を食べたい」という要求を持ったとしましょう。あなたはコンビニエンスストアでお弁当を買い、温めてもらいます。そして自宅に帰りお弁当を食べます。この一連の流れを考えると、以下になります。
①お腹が空いた、温かい食事を食べたい、と考える。
②手軽さなどを考え、コンビニエンスストアで購入することを選択する。
③コンビニエンスストアに行く。
④店内に入り、好みの弁当などを探し、選択する。
⑤レジに弁当を持っていき、接客を受ける。
⑥購入した弁当を持って帰る。
⑦自宅で購入した弁当を食べる。
この体験の中で、企業(コンビニエンスストア)が関わるのは、①と③を除く、すべてとなります。つまり、いずれかが悪いと、「低いCX」になる可能性があるわけです。
②では、コンビニエンスストアの立地、品揃えや味に関する過去の経験、価格帯等が選択の際に考慮されます。
④でも品揃え。また商品の陳列や値引きなどの情報も選択するための情報になります。
⑤では接客態度、適度な声掛け「温めますか?」など。もしかすると時間帯によってはレジに並ぶことになるかもしれません。
⑥では持ち運びやすい袋の入れ方になっていて、中身がぐちゃぐちゃにならないか。もっとも、⑤次第とも言えますが。
⑦は味、量、温かさ。私は一番重要と思います。
この例で分かるのは、様々な部署、部門が関わっている、ということです。つまり、CXを高めるためには、企業全体が顧客の行動を考えなければならないのです。
2.CSとCXの違いは?
さて「CSとCXの違いってなんですか」という質問をよくいただきます。上記コンビニエンスストアの例で言うならば、⑤の接客を思い浮かべてください。
笑顔、適切な声掛け、ハキハキとした挨拶、箸などの封入、決済方法やポイントカードの質問など。これらは「その接客が顧客にとって満足いくものか」を構成する要素とも言えます。これらの満足度を見るのが「CS」です。つまり、要求を満たすための一連の顧客体験=CX、その過程を細分化した際の満足度=CSと呼ぶわけです。
難しいのは、接客で高いCS(良い接客で大満足!)であったとしても、CXが高いとは限らないことです。上記⑦で記載しましたが、例えば⑥までの過程が大満足だったとしても、弁当の中に異物が混入されていたらどうでしょうか。総じて「悪い体験」となるでしょう。
3.CXを高めるために、コンタクトセンターにできることは?
さて、このブログをご覧いただいている多くの方は、コンタクトセンター業界に従事する方かと思います。コンタクトセンターにとって、CXとは何でしょうか。
インバウンドセンター(受電、チャットなど)では、顧客の要求すべてを網羅したサービスの提供はしていないケースが多いです。Webによる自己解決、書類の発送手配など、前工程も後工程もあります。そのため、CSを高めることはできても、CXを高めることは難しいのでは、とお考えになるかもしれません。
その場合は、ぜひ「前工程」「後工程」を意識した応対…というものを考えてみてください。例えば、今お電話いただいたお客様は、前工程でどのような行動をしているでしょうか。それによっては、応対の内容を変えなければいけません。
応対品質の中で「お客様の背景を理解する」というものがありますが、個々の背景はもちろんのこと、自社が提供しているサービスならば、前工程は想定できるはずです。それが全くされていない=CX向上に寄与することは、そもそもできないでしょう。
さて、ここまで書きましたが、正直に申しますと、私は組織によって「色んなCXがあってもよい」と思っています。ただし、重要なのは、組織が掲げている「CX」を、その組織に従事しているスタッフが同じ認識・解釈でいることにあります。そして、CXという言葉を使うか否かにかかわらず「センターだけが良い」のではなく、前工程、後工程を考えて、「お客様にとって何が良いのか」を理解することでしょう。
【関連リンク】最新CX関連レポート
ただいま、CXの最新グローバルトレンドを様々な角度からレポート付きで解説する無料セミナーを実施しております。ご興味がある方は是非以下のリンクより詳細をご確認ください。
過去開催分ブログからは各レポートのポイントを解説しております。