金融機関におけるコンタクトセンターがビジネスへ貢献する価値を模索するため、各種金融機関利用者に対してカスタマーサービスに関連する体験についてのアンケート調査を行いました。
◆調査期間:2024年1月30日~2月1日
◆調査対象:20歳以下~80歳以上の男女 7,486名
◆調査方法:インターネット
調査結果トピックス
- カスタマーサポート(有人対応窓口)に問い合わせたことがある人は15%
- そのうち「電話チャネル」の利用が最も多く49%
- 問い合わせ前に自身で解決策を探した人は86%・そのうち最も多いのが「企業のホームページ」
- 問い合わせた理由は年代によって差があるが、どの年代でも約半数程度は「組織が提供している情報」が理由
- カスタマーサポートの体験を理由に金融機関との「取引をやめた」および「誰かに取引を薦めた」ことがあるのも年代によって顕著に差があり、若年層ほど行動を起こす割合が高かった
①カスタマーサポートに問い合わせたことがある人は15%
全対象へ「過去1年間で、金融機関のカスタマーサポート(人が対応する窓口)に問合せを行ったことがありますか?」と聞いたところ15%があると回答しました。
一定数は窓口へ連絡していることがわかりましたが、同じ金融機関でも差があるのか調査をするために、上記の設問に対して「ある」と回答した人へ「どの金融機関に問合せましたか?」(複数ある場合は、最も頻度が高い、もしくは最も困った問合せをした金融機関)を聞いたところ、銀行が65%で圧倒的に多いことがわかりました。
日々の生活における取引(入出金、支払い、ローン、投資など)の頻度と多様性から、同時に疑問や問題が生じる機会も増えることでカスタマーサポートに連絡する必要が相対的に高いこと、また近年の銀行のデジタル化が急速に進んでいる背景からモバイルアプリやインターネットバンキングへの移行、新たな認証手順など、新しい技術やプロセスを理解し利用するのが難しい顧客や、誤操作からくる問い合わせが多くなっているなど複数の要因が考えられます。
②「電話チャネル」は根強い信頼がある
チャネル別にサポートを求めている人の割合が違うのか調べるために、過去1年間で、金融機関のカスタマーサポート(有人対応窓口)に問合せを行ったことが「ある」と回答した人へ「どのチャネル(有人対応窓口)を利用しましたか?」と聞いたところ約半数となる49.3%が電話と回答しました。
有人サポートを必要とするシーンは主に
①利用者の感情的事情(誰かに聞いてほしい強い気持ち、問題の複雑さ、利用者の好み・認知)
②デジタルチャネル(有人対応がないチャネル)の利便性の低さ
の二つに分けることが可能です。今回最も回答が多かった電話チャネルは数あるチャネルの中で、利用者がどこにいても利用できる、すぐに答えをもらえるという特性があります。上記①のすべてのニーズを最も有効にカバーすることができるチャネルであることから利用者から根強い信頼がある結果だと考えられます。
③問い合わせ前に自身で解決策を探した人は86%・そのうち最も多いのが「企業のホームページ」
次に、電話チャネルに連絡をした利用者の行動をさらに明確にするために「電話チャネルを利用した」と回答した人へ「電話をかける前にご自身で解決策を調べましたか?」と聞いたところ、こちらも約半数となる52.5%が「企業のホームページ」(で解決策を調べた)と回答しました。
企業のホームページは信頼ができる正確な情報が記載されており、利用者向けのガイドラインなどが提供されていることが多く、問い合わせる前の初期対応として利便性が高いことが利用者の行動に繋がっていると考えられます。また中には活用が広がっているチャットボットの利用も期待してアクセスしていることも考えられます。
④問い合わせた理由は年代によって差があるが、どの年代でも約半数程度は「組織が提供している情報」が理由
さらに、電話チャネルに連絡をした利用者の行動をさらに明確にするために「電話チャネルを利用した」と回答した人へ「電話を利用した理由として、近いものを最大2つ選んでください」と聞いた結果を年代別に分けたところ、以下の傾向が見つかりました。
①どの年代でも約半数程度は「組織が提供している情報※」が理由で連絡をしている
②その割合は若い世代ほど大きい
③逆に「電話チャネルに対する嗜好」が理由で連絡をしている割合は年代が上がりにつれて多くなる
※1青色部=組織が提供している情報が原因=回答が「調べても解決方法が見つからなかった」「HPなどの情報が理解できなかった」「HPの情報をもとに手続きしても解決できなかった」
※オレンジ色部=「電話が一番早いと考えたから」「担当者に確認しないと不安だと考えたから」
若い世代はWebやアプリ含めた比較的新しいツールに対するリテラシーが高いことからそれらを利用しやすく、だからこそこれに由来する問い合わせが連絡の理由となっていることが考えられます。逆に年代が高くなるほど問い合わせの1stステップが電話となることに慣れており、これに由来するものが少なくなっていることが考えられます。
⑤カスタマーサポートの体験を理由に金融機関との「取引をやめた」および「誰かに取引を薦めた」ことがあるのも年代によって顕著に差があり、若年層ほど行動を起こす割合が高かった
これまで利用者のカスタマーサービスそのものに関する体験の調査結果をご紹介してきましたが、最後に本調査の趣旨である「カスタマーサービスが与える影響」について調べた結果をご紹介します。
この影響度合いを把握するために「過去1年間で、金融機関のカスタマーサポート(人が対応する窓口)に問合せを行ったことがある」と回答した人に以下の2問を別々に聞きました。
①カスタマーサポートの体験を理由に、その金融機関との取引をやめたことがありますか?
②カスタマーサポートの体験を理由に、その金融機関を家族や親しい友人に勧めたことはありますか?
いずれの質問においてもチャネルに関わらず若年層がカスタマーサポートの体験を理由に行動を起こす割合が高いことがわかりました。
金融商材は他社に乗り換えることが簡単なものではありません。体験の悪さを差し引いても乗り換えの難しさがハードルとなって行動を起こしにくいことが考えられますが、それでも若年層は検討をすることが特徴的でした。
他社に乗り越えることは簡単ではない商材ではありますが、若年層はデジタルネイティブとして企業のHPもSNS含めた様々なソースから商品の比較検討も相対的に容易にできることが理由の一つであると可能性があります。
少子高齢化の背景から、若年層の自社への引き込みはすべての組織における重要なチャレンジとなっています。今回の調査でとくにこの若い世代のロイヤルティにカスタマーサポートが大きな影響を与えることがわかりましたが、商材や問い合わせの内容によってもこの影響は変わるはずです。各社でまずは強化をしたい顧客層を特定したうえで、カスタマーサポートの与える影響を可視化し、有人対応の丁寧さなどの点の単位ではなく、問い合わせが開始する前から終了するまでの一連の流れを単位として捉えた改善がますます求められるでしょう。
参考資料
金融業界の顧客窓口では、すぐれた顧客体験とコスト削減の両軸での追及が求められます。この実現においては、急速に進化するテクノロジー活用や展望、厳しい業法による制約を同時に考慮しつつ、国内全体での顧客のパーソナライズ化されたサービスへの期待の高まりなど、判断の難易度やスピードが年々高まっています。
そのような背景から当社は、センターの戦略・運営を担うシニアマネジメント層(経営層、シニアマネジメント層)を対象とした事例共有や最新テーマの探求する場として、「金融業界コンタクトセンター エグゼクティブリーダー・サミット(以下、金融CCリーダーサミット)」を年5回開催することと致しました。
- 業界内での生の飾らない実践者による事例紹介を通じての効率的な情報収集や学習
- 同業界・同様の立場だからこそ理解しあえる参加者間での情報交換などから、ネットワーク形成や新たなビジネス機会を創出
などを頂けます。
なお、開催に先立って2024年2月15日(木)に開催したキックオフカンファレンスのレポートは以下よりご覧いただけます。