今回も毎月実施しているGBS第5回の内容をダイジェストでお伝え致します。今回のテーマはコンタクトセンターの品質管理についてです。
弊社とCOPC社は昨年10月~12月の期間で、約1,000名のセンター関係者および、約4,500名の消費者に対してアンケート調査を実施し、その結果を12個のレポートにまとめました。
さらに、このレポートを活用して経営層やカスタマーサービス・CX部門のマネージャー向けに重要なポイント・今学ぶべきテーマを、ウェビナーを通じてお伝えしております。このレポートとウェビナーを合わせたプログラムがGBSです。
毎月実施しているこのGBSですが、今回は先日開催いたしました第4回の内容をダイジェストでお届けします。
尚、次回は「WFM(ワークフォースマネジメント)」をテーマに9月15日(木)13:00~14:00で開催致します。ご興味がある方は是非、以下のリンクよりお申し込みください。
当日のメインメッセージ(グローバルアンケート調査結果)
- 品質管理は76%の組織の方針声明に含まれており、92%の組織で専門チームにより行われている。しかし、実施対象、頻度、方法は各社にばらつきがある。
- モニタリングスコアと顧客満足度調査の比較は75%の組織で行われているが、組織と顧客が認識するFCR(一時解決率)には大きなGAPがある
1. 品質管理全般のトレンド
上の図は、方針声明に含まれている要素について質問した結果のグラフ。ほぼすべての組織の方針声明において、顧客体験が含まれていると回答があった中、76%の組織が品質も含まれていると回答した。生産性・コストは方針声明に含まれていないが、センターにとって「品質」を向上させるということは、同時に「コスト」を抑え生産性を向上させることであり、ポイントとなるのは後述するプロセスの改善である。
にこの76%の組織の方針声明に含まれている品質管理が、どのように行われているかを紹介する。
まずは実施対象となるチャネルと体制について。左の図は品質管理を実施しているチャネルに関するレポートである。92%が専門のチームで品質管理を実行していると回答し、その内訳はヒューマンアシステッドチャネルのみが58%、ヒューマンアシステッドチャネルとSSTのいずれもを対象としているのが、34%であった。
※SST=セルフ・サービス・テクノロジー(またはデジタルアシステッドチャネル 例:WebFAQ, Chat bot, IVR など)
また、右の図はこの品質管理を行っている体制である。最も多かったのが「内部の品質管理チーム及びSV・チームリーダーが実施している」で52%だった。
続いて、モニタリングの実施方法を紹介したい。上の図はモニタリングを実施する際の対象の選び方についてのグラフである。95%が録音によるリモートモニタリングを実施していると回答した。前に挙げた品質管理の専門チームに関する結果と合わせてみると、一部の組織はセンター全体の品質をモニタリングするために専門の品質管理チームがリモートでモニタリングを実施し、オペレーター個人の改善のためにはSVやチームリーダーがサイドバイサイドで実施するなど、目的によって異なるポジションが実施することが一般的である、ということが推測できる。これはCOPC規格でも求められている要求事項でありグローバルでのベストプラクティスとなる。注意したいのは、「センター全体の品質をモニタリングする」ためにはモニタリングの対象は、ランダム性を確保する必要があるということである。サイドバイサイドなど改善が目的であれば話は異なるが、センター全体の品質となると、「AHTが平均付近のコールのみ」「特定のコールリーズンのみ」などはバイアスがかかっているためセンター全体のパフォーマンス把握のためには適切ではない。
2.モニタリングスコアの分析
前述のCOPC規格で要求事項として挙げられている(グローバルベストプラクティス)のが、モニタリングスコアと顧客満足度調査結果の比較である。
上の図は、この比較分析をしているかを調査した結果であり、75%が実施していると回答している。結果を見ると、多くの組織が実施しているように見えるが、この活動が正しい方法で行われているのかは不明確であり、以下の結果から推測するに改善の機会は多分に残っている可能性がある。
その理由を見て取れるのが下の図である。
このグラフは組織と顧客に対してFCR(一次解決率)に関する質問を行った結果である。左側の組織の回答を見ると、60%の組織が自社のFCRは61%以上と回答しているのに対して、顧客の回答では、電話で46%、Eメールで34%とGAPがあることがわかった。
ここで示唆されるのは、組織において測定されているFCRが企業目線の定義である可能性があることだ。例えば「FCR=コンタクトから24時間以内に再コンタクトしなかった顧客の割合」などの定義である。再コンタクトしなかった顧客の中には確かに解決した顧客もいるだろう。しかし、諦めて連絡しなかった顧客、SSTに解決を求めた顧客などは含まれておらず、正確な指標の定義とは言えない。
また適切なモニタリングが行われていない可能性もある。
適切なモニタリングとは上述した対象の選定も含まれるが、ここで紹介したいのはモニタリングのチェック項目と実施方法の2種類である。
そもそもモニタリングのチェック項目は、各社さまざまであるべきである。各社重要としている理念が異なるためサービスで表現したい内容も異なるはずであり、それに紐づく管理項目も異なるはずである。しかし全社共通して見るべきなのは「顧客満足度」「コンプライアンス」「ビジネス」にとって重大な要素である。例えば「顧客満足度」、これは下の左側の図における「顧客観点の重大なミスの精度」に該当する。これのスコアが顧客満足度調査結果と関係性を示しているか継続的に分析しながら項目の改善、実施方法の改善を行い、効果的なモニタリングを実行していくことが重要である。
最後に上の右側の図を紹介する。これはカリブレーションの実施状況について調査した結果である。カリブレーションは言い換えると評価基準の統一である。例えば応対における「オープニング」のときに「よいオープニング」とするのか、どのような評価時に「5」をつけるのか「3」をつけるのか、この評価基準を揃えるためのプロセスである。
左側が実施可否、右側が実施頻度の結果である。89%が実施しており、90%の組織が四半期1回以上の頻度で実施していた。
これが正しく行われていない場合、集まってくるモニタリングの結果はセンター基準(つまり顧客基準)でつけた点数ではなく、実施担当者の感性でつけた点数となり、そのあとの成果につながりにくいものとなってしまう。
まとめ
コンタクトセンターのみならず、大部分のカスタマーサービス組織が顧客体験、満足度、あるいは品質管理に間違いなく力を入れています。この活動に見合った成果がついてきているかを上述した満足度調査の結果と比較するなどして把握することは非常に重要です。なぜなら、ここに生産性を上げるヒントがあるからです。
例えば、モニタリングスコアと満足度調査結果とに関係性がない場合は、モニタリング項目の見直しを図る必要があります。そのためには満足度調査の分析を実施し、全体の満足度と相関の高いサービス要素を把握しなければなりません。
あるいは、モニタリングのやり方が間違っている可能性もあります。
その場合カリブレーションによりモニタリングを実施するすべてのメンバーの評価基準が揃うようにするべきです。
コスト削減のために品質管理システムを導入し人件費を削減することは確かにコストインパクトがありますが、より少ないコストでより多くの成果をあげるリーンな体制を整備していくことがセンター全体のコストのためのみならず、パフォーマンス向上のため、ひいては96%がの組織が掲げている「顧客体験」のために肝要です。
今回ウェビナー内容の一部をご紹介いたしましたがレポート(英語版)については以下よりダウンロード頂けます。各統計データが何を意味するのか?つまり、どのようなアクションが求められるのか?などレポートの内容を紐解くウェビナーは随時お申込み受付中です。
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