海外センター通信は、海外カスタマーサービス関連最新情報やトレンドをお届けする連載コラムです。
優れた業績を上げている組織は、組織マネジメント全体へ従業員の関与を広げることで、顧客体験
戦略の浸透・実践と企業価値の創造を行っています。企業の価値は、組織のあらゆる施策、プロセス、コミュニケーションなどに織り込まれ、顧客体験の向上のみならず従業員やベンダー、協業先を含む多くの利害関係者とのシナジーを生み出す非常に重要なマネジメント要素の一つです。
COPC社と弊社はコンタクトセンターに勤める約6,000人の従業員のグローバル調査を昨年実施しました。今回のコラムではそのデータに基づき組織のパフォーマンス、生産性、定着率、収益の向上に繋がる従業員エンゲージメント戦略における「企業の価値観を従業員エンゲージメントへ変換する4つの方法」についてご紹介いたします。
出典(英文)
https://www.copc.com/6-ways-to-translate-company-values-into-employee-engagement/
「企業の価値観を従業員エンゲージメント」へ変換する4つの方法
- 透明性をもって頻繁に、組織として従業員とコミュニケーションをとる
- 従業員のフィードバックを正しく活用する
- 個人パフォーマンスレビューと評価制度を会社の価値観と結びつける
- 従業員の「Well-being」を優先する
①透明性をもって頻繁に、組織として従業員とコミュニケーションをとる
透明性・一貫性をもって、頻繁にコミュニケーションをとることは、組織と従業員の信頼を育むのに非常に重要です。このコミュニケーションは、
A.従業員が会社の価値観を理解する(WHY-なぜ重要か)
B.会社の価値感を体現・代表する行動を理解する(WHAT-何をすべきなのか)
ことを目標としましょう。
◆コミュニケーションのポイント
従業員の仕事が重要な理由、それが組織のサービス全体にどのように貢献しているのかをわかりやすく説明してみましょう。たとえば測定・管理している従業員のKPIが会社の成功にどのように貢献しているかについて、具体的な例を提供してみましょう。(明確に説明できないものがあればそれが是正の対象になります)以下で紹介する従業員フィードバックループでそのヒントについてお伝えいたします。
◆例
・トップダウンのコミュニケーション:タウンホールミーティング
タウンホールミーティング(タウンホール(町役場・市庁舎)のミーティング(会議))は経営陣と従業員との複数対多数のコミュニケーション方法です。一般的には、社長などのトップ経営陣が現場に出向き、従業員を集めて意見を交わす場とするものです。普段伝言ゲームになりやすい内容をダイレクトに従業員へ伝える場にも、経営陣が従業員の考えや現状をより理解する場でもあります。
・one on one:1体1のコミュニケーション
one on one(ワンオンワン=1対1)は一般的に従業員がその直属の上司(例:SV・リーダー)と行うコミュニケーション方法です。一方的に上司から会話したり、何かを連絡したりするものではなく、従業員側に話させて上司が理解度や納得度合いをチェックしたりマインドセットしたりするものです。なお、one on oneはCOPC社との合同調査で従業員満足度と強い相関があることも分かっています。
②従業員のフィードバックを正しく活用する
従業員のフィードバックには従業員アンケート結果などの定量的なものも、マネジメントに関する意見などを含みます。重要なのは単に従業員の満足度などを測定するだけではなく、従業員のアイデアや意見を積極的に求め(その姿勢を見せ)、それに対して会社として行った結果を伝えることです。
なお、従業員が自分のフィードバックが評価されていると感じると、定着率が向上することがわかっています。
COPC社との合同の調査によると自身のチームリーダーが自分の意見を重視していると感じている従業員の84%は「今後 12 か月間、組織にとどまる可能性が高い」と回答していました。逆に自分の意見が尊重されていると感じられていない従業員のうち「今後12か月間、組織にとどまる可能性が高い」と回答したのはわずか17% でした。
◆コミュニケーションのポイント
従業員からの意見は当たり前ですが採用できるものとできないものがあります。採用できるものには、行動計画から従業員を関与させ、効果測定をし、効果の承認をすることが重要です。同時に採用できないものに対しては、理由を納得できるように伝える必要があります。
この工程は従業員のマインドセットを行うのに非常に重要になります。なぜ採用できないのかを説明する際に、会社として求める方向性を伝え従業員の考え方を会社のものと揃えていくことがポイントです。
②個人パフォーマンスレビューと評価制度を会社の価値観と結びつける
成績が良い従業員は一般的に組織に評価されますが定量的な数値も、定性的な行動面も両方を評価している組織は多くないのが実情です。COPC社との合同調査によると、従業員の 1/3は、よくできた仕事に対して十分な賞賛や評価を得ていないと回答していました。
◆コミュニケーションのポイント
改めて従業員個人の評価制度が企業の価値観(例:方針声明、スローガン)と整合しているか確認しましょう。同時にとくに定量的な指標はそもそも従業員がコントロールできるものか確認しましょう。
また「良くできた仕事」も主観に基づきます。この感覚を個人に完全に任せていたらどのような評価制度・項目でも全員の納得感を得るのは難しいでしょう。「何から見て」良い仕事なのか、その立場を明確にしそれに納得頂けるようコミュニケーションをとることが重要です。言い換えると「会社が良しとしている行動はなにか?」「それはなぜか?」などの根幹にある価値観に納得頂けるようにコミュニケーションをとってみましょう。
◆例
・360度評価
360度評価は、従業員に対して一人ではなく複数の関係者が評価を行う方法です。複数の関係者には、上司、人事担当者、同僚、部下、顧客などが含まれます。この評価を通じて従業員が会社の価値をどのように体現し、会社・仲間に貢献・関与しているかについて把握することが可能です。
④従業員の「Well-being」を優先する
最後にご紹介するのは弊社でも力を入れているWell-beingについてです。
Well-beingが求められる背景については以下のブログよりご覧いただけます。
COPC社との合同調査でも自身のチームリーダーが自分のWell-beingを気をかけてくれていると感じている従業員の82%は「仕事に満足している」と回答していました。逆に自分のWell-beingを気にかけてくれていると感じていない従業員のうち「仕事に満足している」と回答したのはわずか14% でした。
◆コミュニケーションのポイント
Well-being(幸福な状態)は心と体と社会(例:人間関係)のすべてが健康的に満たされた状態を指します。重要なのは会社やSV・リーダーが従業員へ与えたものだけでなく、従業員が会社や仲間に与えたものについてフォーカスを当てることです。上述した内容にも含まれますが、従業員は、自身の貢献度合い・役割について理解できていますか?(役割は電話応対など業務におけるものだけでなく組織に属する一個人として会社の価値観を体現するための役割りも含みます)
もし理解できていなければそれを納得できるように説明したり、one on oneやアンケート調査を通じて気にかけていることから伝えてみましょう。
会社との信頼関係が構築できている従業員は働きがいを感じやすくなり、幸福度が高くなります。弊社のWell-being診断においても重要な要素の一つです。
その診断を用いて弊社が昨年実施したWell-being CUSTOMER CENTER AWARD2022の結果から「会社の方針に共感できている」と回答したオペレーターのうち79%は「会社は伝えた問題に対して真摯に対応してくれている」と回答していました。
つまり、上述したマインドセット(会社方針の共感・価値観の理解)ができていれば、伝えた問題に対して真摯に対応してくれていると感じやすい、言い換えると納得感をもって会社へ意見を言ってくれる・会社を信頼してくれる ということを意味します。
従業員のエンゲージメント向上において、会社の価値観への理解は非常に重要な役割を担います。従業員のほうから会社へ積極的にコミュニケーションをとる状態が望ましいですが、そもそもこのような状態はすでに従業員のエンゲージメントが高い状態です。この状態を実現しさらにエンゲージメント、幸福度を高めるためにまずは組織から主体的に従業員へコミュニケーションをとってみましょう。
なお現在の従業員と会社との信頼関係のレベルや従業員の幸福度が国内センターと比べてどれほど高い・低いか診断できるイベント(Well-being CUSTOMER CENTER AWARD2023)がいよいよ開始します。ぜひこの機会に自社の幸福度実現度合いを把握して頂ければ幸いです。
Well-being CUSTOMER CENTER AWARD2023の開催概要はこちらから