200名超の管理者育成経験から学んだこと、プレイヤーとしての経験から感じたことを体験談も交えて“ちょっと変わった視点”からの考え方、マインドの切り替え方、モチベーションの持って行き方について3回にわたってお伝えいたします。皆様のマネジメントのスパイスとしてご活用ください。
《今後の予定》
第一回…夢を語ることのススメ(支えること・支えられること)*今回
第二回…現実と向き合うための心構え(認めること・認めない事)
第三回…プロフェッショナルとしての行動(考えること・考えない事)
突然ですが皆さんには「夢」はありますか?
「理想論を語り、モチベーションを向上させてマネジメントをしなさいという話?」と感じた方も多いかも知れませんが、そうではありません。
この「夢」という言葉。マネジメントを行う際の“道標(みちしるべ)”として活用頂きたいという想いから第一回のキーワードとしました。
1.組織の目指す「目標」「KPI」のとらえ方
組織マネジメントを行う上で、重要な大切な「目標」と「KPI」。無くてはならないものですよね。一方でいかがでしょう。「目標」や「KPI」に“ワクワク・ドキドキ”したことはありますか?スタッフやメンバーに“ワクワク・ドキドキ”させるような説明はできていますか?
「そうは言っても仕事ですから…」きっとこんな言葉が返ってくることでしょう。
本当にそれでよいのでしょうか?それは本当に企業が求めている“働き方”でしょうか?
この辺りは次の章でご説明いたします。
2.「変化」をするきっかけを見つけるヒント
私がスーパーバイザーだった頃、実際あった事例をこれからご紹介いたします。
当時私は毎月2日~3日必ずお休みをするオペレーター(Aさん)を担当していました。面談をしても改善されず、なんとなく“諦めモード”になっていた時でした。
ある日の面談で、普段とは異なる質問を投げかけてみたところ、意外な発見ができたのです。
【面談でのやり取り】
私:「休日はどのような過ごし方をされているのですか」
Aさん:「(にっこりと)私はアーティストの●●がとても好きでいつもその方の曲を聴いたりライブに行ったりしています。これが私の生き甲斐です。」
この時私は2つの事を感じました。
① このアーティストはこんなにもファンの方に愛されて影響を与えていてすごいなあ。機会があったら聴いてみよう。
② こんなに熱中できて好きになれるものがあるんだなあ。このパワーを日々の業務に活かすことはできないだろうか。
その後、私はこんな質問を口に出してやり取りを試みました。
私:「そのアーティストみたいになりたいと思いますか?」
Aさん:「もちろんです。だから今の自分はとても情けないと思う時があります。」
私:「目指す人、憧れる人がいるっていう事は幸せですよね。少し辛い言い方をするかもしれません。Aさんが楽しみにしていたその方のライブを当日になってその方が欠席(公演中止)にしたらどんな気持ちになりますか?」
Aさん:「…(言葉にならず少ししてから)とても悲しい気持ちになります。でもその方はそうならない努力をしていると信じています。だから想像できません。」
私:「そうですよね。きっとその方をAさんが信じているから大事なライブをお休みすることは想像できないですよね。ではAさんの今の仕事の仕方に当てはめてみるとどうでしょう?私たちもお客様にお待ちいただいている事、期待されている事を想像したことはありますか?」
面談後、Aさんの目標が「自分のなりたい姿を明確にして努力をする」に変化しました。なりたい姿というところにはアーティストの名前をそのまま記入して頂きました。Aさんの「夢」であり「理想」であるアーティストを一つの仕事の道標にしてみたのです。
するとどうでしょう。結果として「お休みゼロ」にはなりませんでしたが、お休みの頻度が3か月に1回程度に抑えらました。また、お休み連絡の際にも「しっかり休んで明日は良い状態で仕事に専念できるようにします!」と力強い言葉が返ってくるようになったのです。日々の目標の対象が「憧れの人」に“変化”した事で、ワクワク・ドキドキが生まれた瞬間でした。
3.支えている」から「支えられている」という事に気づくこと、バランスが大切
一方で私自身の感覚にも“変化”が生まれました。Aさんの状況が改善されてきた時、Aさんの仕事を支えなければという一心でサポートしてきた私の気持ちが、Aさんの頑張りを見て「支えられている」という気持ちに変わったのです。実際、Aさんの頑張りもあり、私のチームはパフォーマンスが改善され“優秀なチーム”として一目置かれるようになりました。
支えることと支えられること。この二つがバランスのとれた状態になった時、組織は成長しそれに呼応して個人も成長するのではないかと感じた瞬間でした。
4.「夢」を見つけることは簡単なようで難しい。見つける努力をするプロセスが大切
では組織の中でどのように「夢」を見つけていけばよいのでしょうか。
私は夢を“ビジョン”として置き換えることが一つのヒントになると考えています。
Aさんの例では目指す姿がわかりやすかったですが、全てのスタッフ、組織にこの例が当てはまるわけではありません。
そんな時にオススメの方法が“経営理念や企業コンセプトを読み返す”という事です。
ホームページには必ず記載のある内容ですが、実際私たちがコンサルティングや研修に伺う際、ほとんどの方々がその存在を忘れています。
私はその原因の一つが“個人(スタッフ)と企業(組織)の間においてコンセプト理解に向けたコミュニケーションが進んでいないから”であると考えています。
企業が目指す「夢」(コンセプトやビジョン)に対し個人(スタッフ)が理解し、共感するためのきっかけ作りができていない。きっかけ作りは企業の責任であり管理者である皆さんそれぞれも工夫をしなければならない大切なミッションです。
組織としての「夢」(コンセプトとビジョン)が徹底されていれば個人(スタッフ)は目指す方向性を理解し努力を進めます。結果として組織の力が強化されていきます。
第一回のまとめとして私からは是非この「夢」を語りあう機会を創ることをオススメいたします。
スポーツに例えるならば“試合に勝つこと”だけでなく“どんな試合をしたいか、選手一人一人に何を求めるか”が明確なほどそのコンセプトに向けて具体的なトレーニングが実行できますね。そしてファン、サポーターにも表現ができて感動を生みます。
勝ち負けだけでなく戦略についても興味関心を持ってもらうことができます。
(この辺りは第二回でエピソードとしてお伝えします)
次回はこの「夢」を語り合ったあとに、どう「現実」と向き合っていくべきかの考え方を再び事例を交えてお伝えいたします。