毎月実施しているGBS第10回の内容をダイジェストでお伝えいたします。今回のテーマはコンタクトセンターの生産性・コスト管理についてです。グローバルにおいて現状どのようなコスト関連指標が、どのように活用されているのか?またどのような指標を管理すべきなのかをお伝えします。
コスト関連データの分析は、事業戦略を策定しているコンタクトセンターにおいて約64%が行う一般的なものです。
ただし、弊社のこれまでのコンサルティングの経験上、また今回のアンケート調査では「適切」な指標管理が多くの組織で行われていない可能性が見えました。
当日のメインメッセージ
- コストのみを下げる施策に着目している組織は相対的に少ない。しかし、生産性をあげるために活動している組織は多かった。
- 生産性・コスト関連指標で最も測定されているのが91%でAHT。今回の調査結果で低かったのは、「占有率(49%)」と「コストパーカスタマー:顧客一人当たりのコスト(29%)」であった。
- カスタマージャーニーマッピングを行った組織の内、組織の生産性(効率性)向上に役立ったと回答したのは約69%と多かった。
1. コスト削減に関する戦略
コスト削減における戦略は
・アウトソーシング
・自動化
・コストの抑制
・オフショアリング
の4つにわかれる(左図)。
現場レベルで行えるもの、組織の経営層による決定・実施が必要なものに分類される。これらの戦略を実施する上で組織が掲げている目標が以下である。
戦略的目標として掲げられている割合が60%以上なのは「顧客の声の収集」「顧客の期待に応えるサービスジャーニーの改善」「パフォーマンスデータ」であり、多くが顧客関連のものだった。逆に今回のブログのテーマである「コスト」は、47%と相対的に低く、多くの組織が「コストを下げること」のみに目標を設定していないことがわかった。
2.測定されている生産性・コスト管理指標
上述の戦略の実行・目的達成を行う上で数値管理は欠かせないプロセスである。では生産性・コスト関連の戦略の実行・目的の達成を行う上で、グローバルにおけるコンタクトセンターはどのような指標を管理しているのだろうか?以下がそれをまとめた結果である。
多かったのはAHT(約91%)だった。この統計結果から以下の改善機会が見える。
- AHTは測定されているがそれを構成する平均通話・保留・後処理時間は測定率が低い。
→AHT(平均処理時間)も平均通話時間も一概に短ければ良い、あるいは長ければ良いという指標ではない。顧客やお問い合わせ内容によって「適切」に管理されるべきである。ただし、平均保留時間、平均後処理時間は短いほど良い特性がある。このようにAHTは、異なる特性・異なる状況を表す指標が含まれている複合的指標であり、改善のためには分解して測定・管理することが望ましい。現状(上の図)はAHTの測定率とその他の指標の測定率に差があることから、これらの組織には改善機会があると言える。 - コストパートランザクションは測定されているが、コストパーカスタマーは測定されていない。
→それぞれの指標の意味は以下の通り、
・コストパートランザクション:一つの取引業務当たりに平均してかかったコスト
・コストパーカスタマー:顧客一人当たりに平均してかかったコスト
コストパートランザクションはコンタクトセンターに入ってきたお問い合わせや案件をどのくらい効率よく対応できているか、を表すのに非常に有用な指標であるが、顧客サポート全体としてのコスト効率が高まっているかは表しにくい指標である。
例:デジタルサービス/チャネルの開発・導入により簡単な問い合わせはそこで処理されるようになり、そこで解決されなかった問い合わせがヒューマンアシステッドチャネル(例:電話)に入るようになる。そこで解決されなかった問い合わせは一般的に複雑な内容であり、複雑な内容はAHTが伸びやすい。AHTが伸びるとコストパートランザクションは上がる。
ただし、簡単な問い合わせは人の手を介さず解決できるようになっていることからコストパーカスタマーは下がっている可能性がある。
コストパートランザクションのみを見ている場合「デジタルサービス/チャネルを導入しているにも関わらずコスト効率が悪くなっている」という誤解を招くリスクがある。
3.カスタマージャーニーは生産性向上に寄与する
前述のコストパーカスタマーを下げる(適正化)するために、カスタマージャーニーマッピングが有用であるということが今回の調査の結果からわかった。以下はカスタマージャーニーマッピングを実施したか?実施した際コストについての効果を感じたか?を質問した結果である。
ジャーニーマッピングを行った約69%の組織が「効率向上に役立った」と回答した。カスタマージャーニーマップ(マッピング)は顧客体験の向上に寄与するだけでなく、効率やコストにも効果的だということがわかった。
カスタマージャーニーマップは顧客と組織がやりとりした一連の流れを可視化し、その流れ(ジャーニー)を改善していくためのものである。顧客がたらい回しになっているポイント、組織側の案内不足により増えてしまっている本来不要なお問い合わせなどを発見することに有用で、これがコストにも影響を与えていると推測できる。
カスタマージャーニーマップはあくまでも顧客を中心にジャーニーを可視化し改善していくためのものであるが、直接的・間接的に顧客対応に携わる組織側の動きも併せて可視化するジャーニーマップを、弊社では「サービスジャーニーマップ」と呼称している。サービスジャーニーマップの場合、顧客に関連するムダなプロセスだけでなく、組織の顧客応対に直接、あるいは間接的に関わるムダなプロセスを可視化することができるためさらに効率化が可能になる。
まとめ
効率性・コストの適切な管理はコンタクトセンターが昔から重要視しているものであり、近年では多くのコンタクトセンターが顧客体験向上を第一の目標に掲げ、単純なコスト削減ではなく、効率性をいかに向上させるかに重きを置いていることがわかりました。効率性をあげるためには例えば、ATTが長く、かつ業務量の多いコールリーズンから改善する・ACWが短くなるようシステムを導入する・稼働率をあげるため研修の品質を上げる(より短い時間でより効果の高い研修に改善する)など様々な手法があります。
ただし、重要なのはあくまでも「顧客体験向上」を第一の目標に据えてこれらの活動を行うことにあると弊社では考えています。
今回の調査で左の図にあるとおりAIの活用目的についてのアンケートも行いました。効率・コストに関する効果を期待して導入されている組織も多いですが、最も多いのは「顧客体験の改善」であることがわかりました。
事業計画をレビューする際、顧客体験の向上が建前になっていないか?今の効率性・コスト管理の施策は顧客体験にポジティブな影響を与えているのか?など振り返ることも重要になります。
今回ウェビナー内容の一部をご紹介いたしましたがレポート(英語版)については以下よりダウンロード頂けます。各統計データが何を意味するのか?つまり、どのようなアクションが求められるのか?などレポートの内容を紐解くウェビナーは随時お申込み受付中です。
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GBSについて
弊社とCOPC社は昨年10月~12月の期間で、約1,000名のセンター関係者および、約4,500名の消費者に対してアンケート調査を実施し、その結果を12個のレポートにまとめました。
さらに、このレポートを活用して経営層やカスタマーサービス・CX部門のマネージャー向けに、重要なポイント・今学ぶべきテーマをウェビナーを通じてお伝えしております。このレポートとウェビナーを合わせたプログラムがGBSです。