プロシード通信は、CXを上げるためにポイントとなる考え方やヒントをお届けする連載コラムです。
chatGPTに代表される生成型AIのカスタマーサービスへの活用が連日ニュースをにぎわせています。AIへの投資額は今後も増えていくことが見込まれますが、これと同時にナレッジマネジメントへの注目度が上がっていることをご存じでしょうか。
カスタマーサービスへAIを活用している多くの組織はナレッジマネジメントにも力を入れています。今回のコラムではchatGPTのカスタマーサービスへの応用を例にご紹介いたします。
皆様の情報収取、計画立案にお役立て頂けると幸いです。
AIの進化がナレッジマネジメントを重要にしている理由
- 生成型AIの特徴
- カスタマーサービスへの応用実績と方法
- ナレッジマネジメントのポイント
関連ブログ: AIのカスタマーサービス・センターへの応用におけるポイント
①生成型AIの特徴
chatGPTに代表される生成型AIは、データベースをもとに、聞かれたことに対してアウトプットができるAIです。応用の例は後述しますが、アウトプットは例えば質問に対する回答などになります。
chatGPTの場合、合計で約175億のパラメーター(言語を処理するために使用できる変数とデータポイント)をもとにしたマシーンラーニングから、「CXのビジネスにおける重要性を教えて下さい。」などと聞くと、その答えを創出します。
初めてchatGPTに触れた際このテクノロジーの進化に皆さま驚かれたことかと思いますが、chatGPTは大量の学習データから(質問を受けた場合)「文章の中で論理的に使うべき次の言葉を予測」しているのであって、厳密にいうと「考えて」アウトプットを作っているのではありません。そのため
- ハルシネーションを起こす
最も確率が高いと判断されたことを言うだけなのでそれが間違っているにも関わらず正解のようにふるまう。 - 質問者への共感はない
質問の背景や質問者のシーンを想像、それを活かした方法で回答できない。
という、なんともカスタマーサービスへの応用が難しそうなネガティブな特徴もあります。一方でカスタマーサービスへの応用が進んでいる実態もあります。
②カスタマーサービスへの応用実績と方法
実績
前述したリスクがあるなか、カスタマーサービスへの応用をしている組織はどのように生成型AIを活用しているのでしょうか。以下が実際に活用されている一部の例です。
- 顧客への回答文章のドラフト作成
- アイディアのブレーンストーミング
- 数学・統計的問題の解決
- プログラミングのコード作成
- 文章の校正
- 音声データの感情分析
- 社外・社内向けの情報検索
今後さらにテクノロジーが進化すれば、お客さまのお問い合わせ内容をAIが識別し、回答として確率の高いものを自動で表示しオペレーターのナレッジ検索工程の削減や、生成型AIとIVRを繋ぎ合わせたVoice botの更なる精度向上が見込まれています。
方法
応用の方法にはポイントが2つあります。
A.ハルシネーションの防止
AIがアクセス可能なデータベースを自社商品・サービスのものに限定させ、アウトプットをつくる方法をケースごとに予め定義してAIを活用することが求められます。オペレーターの方に、応対研修で「お客様からのお問い合わせで答えられないものはgoogle検索してね。」と教えているセンターがあるでしょうか。
すべてのセンターが最新の自社商品・サービスに基づいたナレッジから検索させるよう教えているはずです。AIにも同じことが言えます。
B.CXの観点
AIのカスタマーサービスへの応答で間違いなく重要なのがCXの観点です。これには様々な側面がありますが、今回は回答方法を例にご紹介します。
皆さまは「商品の特徴について知りたい」とお問い合わせしたすべてのお客さまが、マーケティング部署が作成したA4で20枚の商品パンフレットを隅から隅まで熟読したいと考えている、と思いますか。
そういったケースも存在するとは思いますが、CXの観点ではそのお客さまが購入を判断するうえで重要視している情報を、そのお客さまにわかりやすい方法でお伝えすることが正となります。
③ナレッジマネジメントのポイント
上述の通り生成型AIがいくら優れたテクノロジーであっても、それは教えられたナレッジに由来するものであり、カスタマーサービスへの応用には自社の情報、さらには自社流のCXの観点をもとにトレーニングする必要があります。
コンプライアンス担当やマーケティング担当がナレッジの基本を作るケースはもちろんありますが、どこかのタイミングでは必ずCX担当者や実際に現場で活躍するオペレーターがCXの観点から「味付け」をしなければ満足のいく活用はできません。
ナレッジマネジメントには様々な側面がございますが今回の内容に沿ったポイントでいうと重要なのは「CXの現場で使えるものを開発、また継続的に磨き込む」ことにあります。
そのためには実際にナレッジを活用している従業員からのフィードバックをえることはもちろん、顧客からのフィードバック、またCX指標に対してナレッジマネジメントが良い影響を与えることができているかの指標分析なども必要になります。
AIへの投資は活発に行われていて、組織も顧客も注目している背景からナレッジマネジメントはこれまでにないほど重要であり、CXへの影響が大きくなっています。新しいテクノロジーの導入が円滑に行えるようにも、ぜひ、マネジメント基盤の見直しについてご検討頂ければ幸いです。
関連リンク①
グローバルトレンドを反映しアップデートを続ける、指標を含む最新CXマネジメント方法が記載された参考書:COPC CX規格 規格書
関連リンク②
グローバルナレッジマネジメントフレームワークの「KCS」紹介動画
※KCS=従来のオペレーターナレッジに由来する応対ではなく、ナレッジ(社内FAQ)を活用して応対を進めるプロセスを起点にナレッジの開発・利用及び改善を進めるためのフレームワーク