COPC通信は、コンタクトセンターマネジメント規格(COPC規格)をもとに、 パフォーマンス向上のヒントをお届けする連載コラムです。
「シフトレフトアプローチ」という顧客体験向上のうえで海外のカスタマーサービス組織では重要視されている概念についてご存じでしょうか?
インターネットで検索すると、一般的には以下のようにその考え方が解説されています。
- サービスアクションまたはステップをエンドユーザーに近づけて、より迅速に回答を提供し、コストを削減すること。
- 顧客が必要とする情報やサービス機能を顧客に近づけることで、無駄な手順がなくなり、コストが高くなるリソースの依存度が軽減されること。
今回のコラムでは、このシフトレフトアプローチが必要な背景、またそれの実践について解説いたします。
シフトレフト戦略が必要となるセンターで起こりやすい課題
オペレーターが顧客からの質問に対し、回答がわからない時や、回答する内容に不安がある時には、スーパーバイザーや2次対応者にエスカレーションをし、確認をします。
スーパーバイザーや2次対応者は、オペレーターからエスカレーションされてきた質問に対し、回答がわからない時には、関連する部門の担当者に、エスカレーションをし、確認をします。
コンタクトセンターでは、日常的に行われているエスカレーションですが、そのデメリットについては、どのようなことが挙げられるでしょうか。
顧客からの質問に対し、すぐに回答できない場合、オペレーターは質問に回答するための情報をえるために、保留をするか、過去の経験から、情報を入手するまでに長く時間がかかると判断すると、回答がわかり次第、オペレーターからコールバックすることを顧客に告げます。
この行為は、顧客視点で見ると…
Ⓐ顧客にとっては悪い体験
オペレーターからの回答があるまでは、電話を保留にされ、ずっと保留音を聞いているか、場合によっては、電話を切り、オペレーターからのコールバックを待たなければなりません。この状況は、顧客にとっては、悪い経験であり、顧客満足度も低下してしまう原因ともなりかねません。
またコンタクトセンターの運用の視点でみると…
Ⓑ運用にとってはコスト増につながる
オペレーターからのエスカレーションは、スーパーバイザーの業務を繁忙にする原因ともなり、本来スーパーバイザーが行うマネージメント業務ができなくなってしまう可能性があります。また、オペレーターからスーパーバイザーへエスカレーションされることで、対応コストが増加することにもなります。
シフトレフトの実践
シフト戦略を成功させるための要素として、FAQなどのナレッジをどのように扱うかということが重要なポイントになります。
顧客向けの公開FAQやオペレーターが業務で利用する社内FAQが、顧客やオペレーターにとって信頼できるシステム(回答が見つかる!)にすることが重要です。
エスカレーションを削減し、できるだけオペレーターが問題を解決することは、顧客経験の向上、顧客満足の向上、運用コストの最適化、サービス品質の向上に繋がります。
また、最近の顧客の行動では、コンタクトセンターに電話をする前には、インターネットや企業のホームページで問題を解決するために検索をする人が増えてきています。顧客が企業のホームページで調べた時に、問題を解決するための回答を提供することができれば、顧客に良い経験を提供し、企業に取っても電話を抑制することができるため、運用コストを削減することができます。
コンタクトセンターにとってはできるだけ(シフト)、左側(レフト)で問題を解決することで、顧客とコンタクトセンター(企業)は「WinーWin」の関係となります。
聞きなれない言葉かもしれませんが、急に沸き上がった言葉ではなく顧客体験の向上を目指す組織、セルフサービス・チャネルが増えている中で言語化・定着した言葉です。
お問い合わせというやりとり(タッチポイント)単位ではなく、サービスをうける一連の流れというジャーニー単位で改善をする考えになります。
弊社が行った最新の調査で、ジャーニー単位でのサービス改善(サービスジャーニーの改善)は顧客体験の向上はもちろん、コストの削減にも有用だということがわかっています。
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シフトレフト実践のうえで重要となる「サービスジャーニーの改善、またその前提となるセンターマネジメントについて」および「ナレッジマネジメント」の詳細は以下の研修より学ぶことができます。
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