エスカレーションから「スウォーミング」へ ~COPC通信 vol.5~

2023.06.06

COPC通信は、コンタクトセンターマネジメント規格(COPC規格)をもとに、
パフォーマンス向上のヒントをお届けする連載コラムです。

スォーミング・モデルというエスカレーションに代わる応対マネジメントモデルをご存じでしょうか。このモデルは海外組織を中心に、顧客の課題解決速度に対する期待が上がっていることを背景に広がっている新しいモデルです。
今回のコラムでは、顧客の課題解決速度、顧客体験/満足、生産性の向上につながるこのスォーミング・モデルについてご紹介します。

①一次解決ができない場合に起こるエスカレーションとその問題点について

コンタクトセンターの一般的な運用では、顧客からの問い合わせに対し、オペレーターが保有している知識・スキルで回答することができない場合には、スーパーバイザーへエスカレーションをします。
スーパーバイザーは、エスカレーションされた質問に対する回答を調査しオペレーターに伝えます。

この運用プロセスでは、スーパーバイザーがエスカレーションされた質問に対し回答がすぐにわかれば迅速に回答を伝えることができますが、複雑で難しい問題の場合には、質問に関連する部門や担当者を探し、問い合わせをし、回答のための情報を収集しなければならないため、回答までに多くの時間がかかってしまいます。

また最近では、AIチャットボットや公開FAQなどで、簡単な質問は顧客自身で解決できるようになっているため、コンタクトセンターには、複雑で難しい問題の問い合わせ割合が増加してきている背景から、生産性や効率性に影響を与えられている組織も増えています。

さらに顧客は、コンタクトセンターに連絡すれば、すぐに問題を解決してもらえる、という期待を持ち問い合わせをしてきますが、上述の複雑で難しい問題の場合、コンタクトセンターの担当者はすぐに解決することができないため、結果として、顧客の満足度も低下させてしまう要因となってしまいます。

顧客満足の観点でも、生産性の観点でも、顧客からの複雑で難しい問題を迅速に解決するための新しい運用方式として「スウォーミング・モデル」が登場しました。

②スォーミング・モデルについて

概要

スウォーミング・モデルでは、顧客の問題を解決する取り組みを、コンタクトセンター部門だけが行うのではなく、全社で顧客の問題解決に取り組む方式になります。顧客の問題に対し、解決できる部門がコンタクトセンターと協力することで(コラボレーションと言います)、迅速に問題を解決することができます。

運用の基本

スウォーミング・モデルの基本形は、組織の各部門から、コンタクトセンターからの質問を対応する担当者を選出し、スウォーミング・チームを構成します。コンタクトセンターの担当者は、コンタクトセンターで回答できない問題が発生した場合に、スウォーミング・チームにその問題を共有します。

スウォーミング・チームの担当者は、共有された問題を解決できる担当者が、その問題の解決に取り組みます。問題の共有とコミュニケーションは、SlackやTeamsなどの社内コミュニケーションツール上で行われます。

メリット

スウォーミング・モデルでは、エスカレーション・モデルとは違い、問題を解決することができる部門と担当者をすぐに探すことができるため、問題解決の時間を短縮することができます。

また、対応した問題と解決方法については、コンタクトセンター部門がナレッジとして形式化し公開することで、知識の属人化を防ぐことができ、全社でのコラボレーションを促進することは、企業内のサイロ化を防ぐことができます。

発展形

現在では、スウォーミング・モデルは更に進化し、プロセス内に人工知能(AI)を組み込み、質問内容から回答することができる担当者を人工知能が過去の対応履歴から探し出す、「インテリジェント・スウォーミング・モデル」が登場しています。


顧客がコンタクトセンターに対し、「問題を迅速に解決してもらえる」という期待では、解決するまでの期待時間は、年々短くなっています。スウォーミング・モデルは、問題を解決するまでの時間が短くなり、顧客の満足度を向上させると同時に、コンタクトセンターの効率性も向上することができるモデルです。取り組みにはコラボレーションが重要となりますが、デジタルで容易にコミュニケーションが行えるようになっているため、貴社センターへの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

今回はスォーミング・モデルという応対を受けつけるためのプロセスについてご紹介させて頂きましたが、応対品質の管理プロセスに焦点をあてたCOPC®クオリティマネジメントベストプラクティス研修を2023年8月より開催致します。ご興味がある方はぜひ以下より詳細をご覧ください。

研修の特徴

  • 一般論や概要ではない、カスタマーサービスの品質管理のために実際に現場で活用され、高い成果を出している管理すべき重要なプロセスと実践的な手法が学べます。
    ※カスタマーサービス組織のグローバルマネジメント規格であるCOPC規格に基づく内容。
  • 2日間で品質管理を通じてビジネスを成功に導くために重要な要素を学びつくせます。また現場で活用可能なツールも提供します。座学だけでなく、ケーススタディやグループディスカッションを通じて手法の更なる理解、現在のトレンドなども学べます。
  • 試験に合格するとCOPC社認定の個人資格を取得することができます。
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