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アンドラゴジーとは、米国の成人教育学者のマルカム・ノールズ(Malcom Knowles)が提唱した、成人学習の特徴です。
今回のコラムでは日本ではあまり聞かない言葉ながら、コンタクトセンターの研修設計の際に参考になるこの成人学習理論の「アンドラゴジー」について説明をします。
内容
- アンドラゴジーとペダゴジー(pedagogy)
- アンドラゴジー:6つの特徴
A. 成人は、内面的に動機付けられ、自主的
B. 成人は、獲得してきた経験と知識を学習に活用する
C. 成人は、目標志向(目的志向)
D. 成人は、関連性を重視する
E. 成人は、実用的
F. 成人学習は動機付け(Motivation)が必要
①アンドラゴジーとペダゴジー(pedagogy)
成人教育に対し、子供の教育理論をペダゴジーといいます。
ペタゴジーでは、教育の主体は教師であり、学習者は受動的に教育を受けることが多くなります。
ペダゴジーの教育では、決められたカリキュラムにより、決められた評価方法を合格するために学習することが多く、皆さんも、小学校、中学校、高校、大学とこの教育方法で学んできたと思います。
学校を卒業し、企業に就職し、社会人として仕事を始める時には、入社研修などの初期研修を受講することになると思いますが、
社会人への学習方法は、学生の時と同じ方法論で実施して良いのでしょうか?
皆さんのセンターでは、成人の従業員に対して、学生と同じ教育方法で実施していますか?
社会人(成人)として教育を受ける場合は、新入社員が新人研修を受講するときのように、前向きで積極的に研修に参加し、多くのことを自ら学ぼうとする能動的な姿勢であると思います。
一方、子供の教育では、先ほど説明したように、教師から教えて貰うという、受動的な姿勢となります。
成人教育と子供の教育の違いは、学習に対する姿勢に大きな違いがあります。
アンドラゴジーとは、成人に対する学習のための方法論であり、成人学習は、子供の学習方法(ペタゴジー)とは違うということを理解し、学習計画を策定する必要があるのです。
では、成人学習と子供の学習の違いはどのようななものでしょうか。
アンドラゴジーでは、成人学習の6つの特徴について示しています。
②アンドラゴジー:6つの特徴
(1)成人は、内面的に動機付けられ、自主的
成人の学習は、自主的で能動的な学びとなります。
能動的になるためには、自ら学習する意欲が必要となります。
※自ら学習する意欲を持ってもらうためにどうするのかは、モチベーションの項で説明します。
また、成人になれば、自己管理ができるようになるので、学習方法についても教師が一方的に話す内容を聴く学習ではなく、研修に参加している本人が自主的に学習する必要があることを理解し研修に参加して貰うことが重要となります。
最近の流行の研修スタイルは、ブレンド型学習です。
ブレンド型学習では、知識の習得をeラーニングや動画コンテンツで学習し、議論や実践的なスキルを対面研修で実施します。eラーニングや動画コンテンツでの学習については、いつ実施するかは、学習者本人が決定します。
対面研修の実施日までに、学習を完了しておけば良いため、学習者の自己管理となります。
(2)成人は、獲得してきた経験と知識を学習に活用する
成人には、それぞれ獲得してきた経験があります。獲得してきた経験は学習のために活用することができます。成人教育の場合には経験があることを前提に起き、それを活用することで学習をより効果的に行うことができます。
例えば、ワークショップを実施し、ワークショップのテーマについて、どのような対応を行うかを学習者に考えてもらいます。
ワークショップの議論の中で、経験により培ってきたものやノウハウなどを学習者同士で共有することで学習効果を高めることができます。
コンタクトエンターのオペレーター教育では、過去に他のセンターでの経験者がいることが多くあるため、知識を一から教えるよりも、考える方式にすることで、より効果的な学習となります。
(3)成人は、目標志向(目的志向)
成人教育の最終目標は、学習を通して、自身の目標を達成することです。そのため、学習したことを業務にどのように活かすことができるのかが重要になります。学習したことが、業務でどのように活かすことができるのかを明確に伝えることが重要です。
また、組織として重要なことは、組織の目標を達成することですが、組織の構成員である学習者が研修を受講し、スキルアップすることで、組織の目標を達成するために貢献できる人財となることです。
そのため、組織の目標と個人の目標を関連付けることが重要となります。
(4)成人は、関連性を重視する
成人は、自身の弱みや、現状の課題を持っていて、これを解決するためにはこの学習をするべきだと考えれば、関連性(レリーヴァンス)を見いだすことができ、積極的に学習する姿勢を持ちます。
また、現在の業務との関連性も大切です。学んだことを、現場に戻って実践する環境や機会がなければ、関連性もなくなってしまいます。
学習者の業務に関連した研修になっているのか確認することが重要です。
(5)成人は、実用的
成人の学習では、具体的に何を学び、得られるのかが事前に解るようにしておく必要があります。成人は、社会生活で課題が発生し、課題を解決するために学習が必要だと感じた時に学習をしようとします。(実利的)
そのため、学習をすることで、具体的に何を得られることができるのかを明示して、学習者にとってメリットがあると思って貰う必要があります。
研修のコンテンツの内容については、学習者のためになるコンテンツとなっているか良く確認することが重要です。
(6)成人学習は動機付け(Motivation)が必要
成人の学習は「動機」を必要とします。例えば、業務でのコーチングや上司との面談などにより自分の弱みや課題を把握し、学習することで、その弱みや課題を改善することができることを期待します。
研修へ参加する時も、必要性を感じてもらえなければ積極的に学習してもらうことはできません。
アフターコロナにおいては、ブレンデッドラーニングが主流になってきていますので、既存の研修を見直して、新しく研修の設計をする機会も増えていると思います。
新しい研修を設計する際には、ぜひ今回ご紹介したアンゴラジーの6つの特徴が参考になれば幸いです。
※機会があれば、最近海外でもトレンドとなってきている、ブレンデットラーニングについても執筆したいと考えています。