プロシード通信は、CXを上げるためにポイントとなる考え方やヒントをお届けする連載コラムです。
顧客が、企業が提供するチャネル(チャット・ボットや公開FAQ、メール、有人チャット、電話など)を利用し、問題を解決することを「コンタクト・リゾリューション」といいます。
現在のコンタクトセンターは、顧客が利用できるチャネルを複数提供する、マルチチャネル化を行っているセンターが多いため、コンタクト・リゾリューションの状況を管理することが難しくなってきています。
また、コンタクト・リゾリューションに関連する新しい指標も出てきているため、センターで管理する指標については、整理する必要が出てきています。今回のコラムではこの、コンタクト・リゾリューションに関する指標について、説明をします。
1.コンタクト・リゾリューションに関する指標
●FCR:First Contact Resolution
顧客からの問い合わせのうち、最初の問い合わせで解決できた割合を測定します。FCRは、First Call Resolutionの略でも使用されます。First Call Resolutionは、電話チャネルにおいて、顧客からの問い合わせに対し、最初の問い合わせで解決できた割合を言いますが、First Call Resolutionの場合には、One Call Resolution(OCR)として表現される場合があります。
また、First Contact Resolutionは、Right First Time(RFT)と表現される場合もあります。
●ZCR:Zero Contact Resolution
Zero Contact Resolutionは、顧客が、チャット・ボットや公開FAQなどのセルフサポートシステムを利用し解決できた割合をいいます。
Zero Contact Resolutionは、企業が提供する、セルフサポートシステム(=無人で解決できた)全体での評価となります。例えば、チャット・ボットと公開FAQが提供されている場合には両者の合計値となります。
●OCR:One Contact Resolution
One Contact Resolutionは、顧客が1つのチャネルだけを利用して問題を解決できた割合をいいます。現在では、顧客は複数のチャネルの中から利用するチャネルを自由に選択することができますが、最初に利用したチャネルから、チャネルを変更せず、問題を解決できた割合をいいます。
●ACR:Active Contact Resolution
顧客が1回の問い合わせで解決できた割合。FCRでは、本当に顧客の問題が解決されているか不明であるため、同じ顧客から、同じ内容の問い合わせが来ないか、一定の期間監視し、問い合わせがない場合に解決と判定し、測定を行う。一定の期間はセンターによって違いがあるが、3日間の設定が標準的な日数になってきています。
2.コンタクト・リゾリューションの重要性
上記で説明したように、コンタクト・リゾリューションには様々な指標が登場してきています。各指標には、それぞれ意味がありますが、コンタクト・リゾリューションを様々な観点から管理する必要があるのはなぜでしょうか。
もともと、コンタクト・リゾリューションはコンタクトセンターの効率性を表す指標として管理されていましたが、カスタマー・エクスペリエンス(CX)の登場により、効率性の指標から、カスタマー・エクスペリエンスの指標としてとらえられるようになりました。
そのため、コンタクト・リゾリューションは、コンタクトセンターに取って重要な管理指標のひとつになっています。
実際に、コンタクト・リゾリューションの評価では、顧客が同じチャネルを複数回利用して問題を解決した場合でも、チャネルを変更して問題を解決した場合でも、問い合わせ回数が増えるごとに、カスタマー・エクスペリエンスや顧客満足度(CSAT)は低下していくことが、多くの調査結果から判明しています。
コンタクト・リゾリューションは、カスタマー・エクスペリエンスや顧客満足度と強い相関性があり、最初の問い合わせで問題を解決することができれば、カスタマー・エクスオペリエンスや顧客満足は向上します。
また、コンタクトセンターにとっては、最初の問い合わせで問題を解決することができれば、効率性(=パフォーマンス)は向上します。
このように、顧客からの問い合わせに対し、最初の問い合わせで解決することができれば、センターの効率性は向上し、顧客満足度やカスタマー・エクスペリエンスに良い影響を与えることができるため、コンタクト・リゾリューションの重要度が高くなってきています。
3.注目度が上がっているZero Contact Resolution
ゼロコンタクトリゾリューションは、10年前に登場していた指標ですが、最近になり注目されてきた指標です。
顧客がセルフサポートシステムにより問題解決をしている割合を、適切に理解し、カスタマー・エクスペリエンスの向上をするためには、セルフサポートシステムでの解決率を向上させる必要があるという考えから管理指標として注目を浴びています。
更に、ZCRでは、ZCR戦略として、顧客に問題が発生する前に、コンタクトセンターから、ニュースレターやメール、アウトバウンドなどにより情報を発信し、顧客がコンタクトをすることがないような活動をするという考えも出てきています。
4.コンタクト・リゾリューションの管理で重要なことは何か
コンタクト・リゾリューションは、顧客がコンタクトセンター(企業)やコンタクトセントナーが提供するサービス(チャネル)を利用して、迅速に問題が解決されているのかを管理することです。顧客満足やカスタマー・エクスペリエンスは、問題が迅速に解決されることにより向上するため、顧客が最初に利用するサービスの解決率を適切に管理しなければ、顧客満足もカスタマー・エクスペリエンスも低下させてしまう恐れがあるため、可視化して適切な管理をする必要があるということです。有人対応でも無人対応でも、顧客が利用するサービスに対して、コンタクトセンターとして適切なサービスレベルを担保して提供することが求められているということです。顧客は、顧客の問題を解決できると思い、各種サービスを利用するため、顧客の期待に答えることができるサービスを提供することがコンタクトセンターの使命でもあります。
今後は、オペレーターの採用が厳しい環境になるため、有人での対応も限られ、セルフサポートシステムを利用しなければならない状況が想定されます。その場合に、セルフサポートシステムでの解決状況を適切に管理しなければ、顧客はそのシステムを利用しないか、他社のサービスに移ってしまうかもしれません。問題を迅速に解決することは、顧客のニーズとしてもますます高くなっている状況のため、コンタクトセンターでは、コンタクト・リゾリューションの状況を適切に管理することが重要となっています。
関連リンク:COPC® CX規格 ベストプラクティス研修
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